中1では物理分野「圧力」の中で登場した「気圧」。
気圧というものが存在して、標高によってその大きさが変化することを学びましたね。
この「気圧」が、中2では地学分野「天気」の中で再登場します。
物理的な視点と地学的な視点の両方が出てくるのでややこしく感じるかもしれませんが、見方が変わっても気圧は気圧です。
苦手意識を持たず、ひとつひとつポイントを整理していきましょう。
そもそも「気圧」とは?
空には厚い大気の層があり、地球を取り巻いています。
この大気には重さがあるので、地表にはこの重さによる圧力が加わっています。
この圧力を大気圧(または気圧)といいます。
気圧は上空にいくにつれ低くなるので、1013hPa(ヘクトパスカル)を標準の気圧と決めて、これを1気圧といいます。
大気圧はあらゆる方向から物体に向かってはたらきます。
※大気とは地球をとりまく気体のことで、その中で地表面に近い部分の大気を一般に空気といいます。
中学内容・高校入試の「気圧」を理解する上で覚えておきたいポイント!
概要がつかめたところで、ここからは気圧を理解するために押さえておきたいポイントをご紹介します。
- ポイント①気圧の単位
- ポイント②気圧と標高の関係
- ポイント③低気圧と高気圧
- ポイント④上昇気流と下降気流
では、順番に見ていきましょう。
ポイント①気圧の単位
物理分野で圧力の単位はPaと習いましたが、気圧ではhPaを使います。
異なる単位のように見えますが、どちらもPaが元になった圧力の単位です。
簡単に言えば、長さの単位としてmmとkmを使い分けるのと同じです。
気圧の基準面である海水面上はおよそ101300Paですが、この表記では0が多くてわかりにくいですよね。
そこで、101300Pa=1013hPaと表しています。
この基準面での気圧の大きさ1013hPaを、1気圧と呼びます。
「天気」で学んだように、天気図上に描かれた等圧線は1000hPaを基準として4hPaごとに引き、20hPaごとに太線となります。
1気圧=1013hPaが基準ではないので注意しましょう。
ポイント②気圧と標高の関係
気圧も気温も、高さ(標高)に伴って変化します。
気温は標高に比例して、100mごとに0.6℃ずつ下がります。
気圧も標高が高くなるにつれ小さくなりますが、比例関係はありません。
ポイント③低気圧と高気圧
まわりより気圧が低いところを低気圧、高いところを高気圧といいます。
どちらも明確な基準はなく「まわりと比べて」の高低で決まる点に注意しましょう。
低気圧と高気圧では風の向きが異なります。
「じゃぐちをひねる(低気圧の向き)と水が出る(雨が降る)」と覚えたり、いっそ体をひねって体で覚えたり、工夫して覚えると忘れにくいです。
高気圧の中心では天気が良く、低気圧の中心では悪いことが多いです。
ポイント④上昇気流と下降気流
なぜ高気圧の中心では天気が良く、低気圧の中心では悪いことが多いのでしょうか?
それには上昇気流と下降気流が関係しています。
空気のかたまりが上昇してうまれる大気の流れを上昇気流といい、下降する場合を下降気流といいます。
ここで、低気圧に向かって吹き込んだ風はどこへ行くかを考えてみましょう。
地表にたくさん空気がたまっているので、風が流れる先は上空しかありませんね。
このように、低気圧の中心では気圧が低いため地表にあった空気のかたまりが上昇し、上昇気流が発生します。
上昇気流が起こると雲が発生するため、低気圧の中心では天気が悪くなりやすいのです。
なお、上昇気流によって雲が発生するメカニズムは、次の項目で詳しく解説します。
そして高気圧の中心では、外側に吹き出す風を上空から供給するような形で下降気流が発生します。
下降気流では雲が発生しにくいため、高気圧の中心では天気が良いことが多くなります。
このように高気圧では下降気流、低気圧では上昇気流が起こるため、高気圧では天気が良く、低気圧では天気が悪いことが多いのです。
気圧と天気の変化
それでは、上昇気流が起こると雲が発生するメカニズムを詳しく見ていきましょう。
「天気」で学んだように、大気と水は太陽エネルギーによって循環しています。
太陽によって水は水蒸気になって上昇しますが、上昇気流によって支えられなくなって落ちてきた雲粒(水滴)が雨です。
このとき、大気も同時に温められていることに注目しましょう。
大気が温められて上昇気流が生じると、空気のかたまりは上空に行くにつれ気圧が下がるため膨張します。
膨張すると空気の温度は下がり、さらに上空にいくにつれ気温は下がるので、そのうち露点に達します。
すると、空気中の小さなちりを凝結核として無数の細かい水滴や氷の粒ができます。
これが雲であり、地上付近にできた雲のことは特に霧(きり)といいます。
このように、気圧と天気には密接な関係があることがよくわかりますね。
なお露点とは、空気が冷えて水蒸気が凝結しはじめる温度のことです。
露点については飽和水蒸気量の記事で解説していますので、そちらも合わせて読んでみてください。
気流と風の向き
風は気圧の高い方から低い方へと流れます。
川が標高の高い方から低い方へ流れるのと一緒ですね。
ただし、上空では低気圧の上空から高気圧の上空に向かって流れます。
そうでないとどこかに空気の足りない部分ができ、空気が循環しなくなってしまうからです。
高校入試の「気圧」分野では実際にどのような問題が出題されるのか?
それでは実際の入試問題を解いてみましょう。
以下の問題は、平成30年度都立高校入試の大問2から抜粋したものです。
“<レポート>雲のでき方について
山頂に着いたとき、山頂よりも低い位置に雲が広がって見えた。そこで、雲のでき方について調べることにした。
雲のでき方について調べたところ、以下のことが分かった。
①空気のかたまりが上昇すると、気圧や温度が変化する。
②空気の温度が変化することにより、空気に含みきれなくなった水蒸気は水滴になり、雲ができる。
③雲ができる高さは、空気のかたまりに含まれる水蒸気量や上空の温度によって異なる。
ア:空気のかたまりは、上昇するほど周囲の気圧が低くなるため、膨張して温度が露点より上がり、雲ができる。
イ:空気のかたまりは、上昇するほど周囲の気圧が低くなるため、膨張して温度が露点より下がり、雲ができる。
ウ:空気のかたまりは、上昇するほど周囲の気圧が高くなるため、収縮して温度が露点より上がり、雲ができる。
エ:空気のかたまりは、上昇するほど周囲の気圧が高くなるため、収縮して温度が露点より下がり、雲ができる。”
では、早速解いていきましょう。
このように一見似た選択肢が並んでいる設問では、選択肢の違いに着目してどの記述が正しいか考えていきます。
まず1つめの違いは「上昇するほど周囲の気圧が低くなるか高くなるか」の部分です。
気圧は上空に行くほど「低くなる」ので、この時点で選択肢はアかイに絞られます。
空気のかたまりは、上昇するにつれ周囲の大気から受ける圧力が小さくなるので膨張します。
2つめの差異は「空気が膨張すると温度が上がるか下がるか」という点です。
空気が膨張すると、膨張することにエネルギーを費やすので温度が下がります。
よって、正解はイです。
ここで「空気の温度が上がると膨張するんだから、膨張したら温度が上がるのでは?」と感じた方がいるかもしれませんね。
これはとてもいい疑問の持ち方です。
ここを理解するには「他との熱のやり取りがあるかどうか」を考えましょう。
空気のかたまりが他から熱を受けていれば、その熱によって膨張して、さらにその後また熱を受けて温度が上がることもあるでしょう。
でも、山の斜面に沿って上昇する過程では空気のかたまりが他からの熱を受けていません。
あくまで気圧の低下に伴って膨張が必要になっただけで、膨張に使うエネルギーは自分でまかなっているのです。
膨張に伴って温度が上がるか下がるかは「熱のやり取りがあるかないか」をよく考えてみましょう。
高校入試に向けた「気圧」の勉強方法について
問題の感覚がつかめたところで、勉強方法をまとめましょう。
地表と上空に分けて考えよう
気圧について学んでいく中では、上昇気流や下降気流の理解が欠かせません。
しかし、実際に勉強している中で「気温が上がったり下がったり、結局どっちなの?」とややこしくなってしまいがちです。
ここで混乱しないように「地表近くの大気」と「上空の大気」を区別して考えてみましょう。
「地表近くの大気」が暖められると上昇気流が起こり、大気は上昇します。
すると「上空の大気」は地表に比べて気圧が低いので膨張し、温度が下がります。
このように、地表と上空に分けて考えることで大気の変化や動きがわかりやすくなるのではないでしょうか。
気圧の直前対策法!
それでは具体的に、気圧の直前対策としてどのようなことに取り組めば良いのでしょうか?
低気圧と高気圧の特徴を押さえる!
低気圧と高気圧の特徴を問われる問題も出題されることがあります。
表で整理してしっかり覚えておきましょう。
まとめ
気圧について理解できたでしょうか?
気圧の問題は、物理分野の圧力の問題や地学分野の天気の問題と組み合わせて出題されることが多いです。
どんな問題がきても乗り切れるようしっかりポイントを整理しておきましょう。