「赤道・緯度」は中学社会・地理分野の最初期に学ぶ内容です。
世界共通の地理のルールのようなものなので暗記が中心になる部分ですが、「なぜ覚える必要があるのか」を理解することでグッと身に付きやすくなります。
この記事では「赤道・緯度」の解説から暗記方法、関連知識までまとめて説明していきます。
高校入試の赤道・緯度に関する問題の出題傾向
都立高校入試では、ここ5か年で赤道や緯度に直接関係する問題は出題されていません。
それなのに、なぜ「赤道・緯度」について押さえておく必要があるのでしょうか?
それは、赤道・緯度に関する知識は地理の学習を進める上で大前提になるものだからです。
いわば地理を学ぶ上での基礎ルールのようなもの、共通言語と言っていいかもしれません。
赤道・緯度が何であるかを理解するのは、中学地理を学習する第一歩となるのです。
この記事を読んで、しっかり基礎を固めてくださいね。
赤道・緯度とは
赤道とは、地球を北半球と南半球に分ける境界線のことです。
緯度の説明として、教科書には「地球の中心から地表を見たときに、地球を南北に分ける角度」と書かれています。
これだけでは少し分かりにくいかもしれないので、図で見てみましょう。
次の図は、球体である地球を北極点を真上、南極点を真下にして真横から眺めたものです。
図のように、赤道の緯度を0度として、北極点と南極点までがそれぞれ90度に分かれます。
そして、同じ緯度を結んだ線を「緯線」といいます。
地球儀で言うと横(東西)に引かれているのが緯線です。
同じ緯線の上にある場所は、すべて緯度が同じです。
線といっても、地上に実際に線が描かれているわけではありません。
あくまで、地球上のどの位置になにがあるかを示すために使われます。
緯線はすべて赤道と平行になります。
卵を上から真っすぐに切ると輪切りになるようなイメージです。
北極点は北緯90度、南極点は南緯90度の点を指します。
北緯90度と南緯90度が他の緯度と違って「線」でなく「点」で表されるのは、地球が球体だからです。
本初子午線・経度とは
続いて、赤道・緯度とセットになる本初子午線・経度について説明します。
ある場所が地球のどこにあるのか、緯度によって南北方向の位置はわかりました。
あとは東西方向の位置を示すことができれば、ある場所の位置は地球上の一か所に定まります。
数学で言うx軸とy軸のようなものですね。
このように、東西の位置を示すのに使われるのが経度です。
経度・経線は緯度・緯線と似た役割をしますが、こちらは南北ではなく東西の位置を示します。
また、緯線とは違って経線は全て北極点と南極点を通るのが特徴です。
そのため、先ほどの図と同じように地球を真横から見たとき、経線同士は平行に見えません。
地球を輪切りにするのではなく、くし切りにするイメージです。
緯度が0度となる基準の線を赤道といいましたが、経度が0度となる基準の線は「本初子午線」といいます。
十二支の子(ねずみ)が北、午(うま)が南を表すことから、南北に走って東西を分ける線としてこの名前になりました。
緯度と経度、赤道と本初子午線はよくセットで出てくるので、合わせて覚えましょう。
経線は縦に引かれるので「けいたくん」、緯線は横に引かれるので「いよちゃん」と覚えると忘れにくいです。
緯度と気候区分の関係
では、高校入試で緯度や経度の知識がどのように使われているか見ていきましょう。
まずは緯度と密接な関係がある「気候区分」について解説します。
同じ緯度では気候が似る
緯度は、地球の自転と気候の変化を説明するのに必要な知識です。
緯度の高さによって太陽の光の当たり方が違うので、同じ緯度のところでは似た気候になりやすいです。
ただし、気候は他にも以下のような要素に影響されるため、緯度が同じだからといって全く同じ気候にはなりません。
- 標高の違い
- 海からの近さ
- 地形
- 海流
- 風
でも、ある程度の傾向は似ることが多いです。
資料集などに載っている世界の気候区分の図と合わせて見てみましょう。
世界地図を横線(=緯線)で区切るかのように、同じ気候区分が分布していることが読み取れます。
例えば、特徴の大きい地域として低緯度地域・高緯度地域が挙げられます。
- 赤道付近(緯度0度付近=低緯度)は一年中高温
- 高緯度(北極点や南極点に近い)は、冬は太陽の光が当たらないので寒さが厳しく、夏はずっと太陽が沈まないこともある(白夜)
というように、緯度が大きく異なると一年を通した太陽の影響が大きく異なります。
太陽が出ているかどうかで昼と夜の様子が大きく異なるのと同様に、太陽の光の当たり具合が異なると気候に大きな差が出ます。
日本の気候は緯度による差が大きい
日本は南北に長いので、緯度も20度くらいから45度くらいまで国土が分布しています。
そのため、同じ国でありながら、北海道は寒く沖縄は暖かいというように気候の差が大きいです。
入試ではこうした特徴を活かし、気温や降水量のグラフを見て、どの位置の都市のグラフかを答えさせるような問題がよく出されます。
このグラフの形が似ていれば、似た緯度の都市である可能性が高いと推測できます。
また、経度は時差を説明するのに必要な知識です。
同じ経度の都市は基本的に同じ時刻=時差がないことになります。
北半球と南半球における季節違い
さきほど、似た緯度の都市であれば気温や降水量のグラフが似た形になることが多いと述べましたが、注意したい点が1つあります。
それは、赤道をはさんで北半球と南半球では季節が逆になるということです。
これは地軸が傾いているためですが、それゆえ北半球の夏と南半球の冬は太陽の光の当たり方が似ています。
つまり、北緯30度と南緯30度のように緯度の値が同じところでは、気温や降水量のグラフが反転(半年分ずれた)したような形になるのです。
そのため、気温や降水量のカーブが反対の形になっている場合は、北半球と南半球の同じ緯度の都市を表している可能性が高いと読み取れます。
よく出題される赤道の特徴
続いては、気候との関係以外で出題されやすい赤道・緯度の特徴を整理します。
赤道が通る場所を覚えておこう
世界地図を見て、どこに赤道が通るのか覚えておきましょう。
ポイントは次の3ヵ所です。
- アフリカ大陸の南側、カーブしている部分の少し南
- シンガポールの少し南
- 南アメリカ大陸の北側、少しくぼんでいるところ
この3ヵ所に印をつけて、その全てを通るように線を引いたところが赤道です。
また、地図帳を見て赤道を通る国も覚えておくと良いでしょう。
赤道を境に北半球と南半球に分かれ季節も逆転するので、赤道の通る場所はきちんと覚えておくことが大切です。
赤道はどの緯線よりも長い
メルカトル図法で描かれた世界地図を見慣れていると、赤道も緯線も同じ長さのように見えますね。
でも、よーく思い出してみてください。
地球は丸いので、地球を輪切りにするように引かれた緯線の長さは赤道と同じではありません。
赤道はどの緯線よりも長く、緯線は緯度が大きくなるにつれ短くなります。
一方、経線は地球をくし切りにするように引かれているのですべて同じ長さです。
他の図法で描かれた地図が出題されることもありますので、赤道と緯線の長さに差があることは頭の中に入れておきましょう。
赤道・緯度に関する入試問題を解いてみよう!
それでは、実際の高校入試問題を解いてみましょう。
以下の問題は平成31年度神奈川県公立高校入試問題の大問1から抜粋したものです。
“略地図Ⅰ~Ⅳは、現在の世界の様々な地域を表しており、それぞれ緯線は赤道から20度ごと、経線は本初子午線から20度ごとに引いたものである。
略地図Ⅱ及び略地図Ⅲについて、次の問いに答えなさい。
次の≪ ≫中の( あ )、( い )にあてはまるものの組み合わせとして最も適するものを、あとの1~4の中から一つ選び、その番号を答えなさい。
≪略地図Ⅱの( あ )で示した線は、本初子午線を表している。また、略地図Ⅱのcで示した線と略地図Ⅲの( い )で示した線の緯度は同じである。≫
1. あ:a い:d
2. あ:a い:e
3. あ:b い:d
4. あ:b い:e ”
それでは、さっそく解いていきましょう。
まず本初子午線の位置ですが、これはイギリスを通ります。
略地図Ⅱの中にイギリスは描かれていませんが、アフリカ大陸の形からその北に位置するヨーロッパの形を思い出すことで、本初子午線はaだとわかります。
次にcと同じ緯度をもつ緯線がdかeを判断する問題です。
「緯線だけ見て判断しろと言われても……」と、困惑する必要はありません。
緯線と平行に走っている赤道が世界地図のどこを通るのか思い出せれば解ける問題です。
赤道が通るポイントは3つありましたね。
略地図Ⅱの「cの1本北の線」と略地図Ⅲの「dの1本北の線」が赤道です。
これらの略地図中の緯線はいずれも赤道から20度ごとに引かれているので、cとdは同じ緯度の緯線だとわかります。
よって、あ:a い:dとなり、正解の番号は1です。
赤道・緯度問題の直前対策法!
赤道・緯度の基本知識がわかったら、気候区分・気温と降水量のグラフといった関連知識と組み合わせて使えるようにしましょう。
使える知識にするためには演習を繰り返すのが一番です。
自分に合った問題集の他、過去問に積極的に取り組んで演習を進めましょう。
まとめ
赤道・緯度問題が理解できたでしょうか?
中学社会・地理分野の基礎となる部分ですので、苦手意識がある方は早い段階で克服しておきましょう。