全国47都道府県の公立高校入試のうち、38の都道府県で作文が出題されます。
この作文は公立高校国語入試の中で最も高い配点を持っています。実に「10点以上」が配点されており、合格するためには作文対策が欠かせません。
一般的に 作文の力を身につけるには、地道かつ特別な対策が必要であると考えられがちです。しかし、採点の内訳を理解し指定された条件を守りさえすれば、高得点を狙うことは十分可能です。
今回の記事では、そうした条件だけでなく直前に押さえるべき「作文の作り方」もまとめているので、時間の限られた受験生の勉強に役立つと思います。
今回は、「採点・減点項目」「時間の使い方」「直前期に押さえておくべき記述法」の3つの内容に分けて、都立入試の作文の勉強法を解説していきます。
都立の配点形式
まず初めに、都立入試の作文における配点を見ていきます。
東京都教育委員会が平成27年に発表した「部分点の基準」によると、200字作文では「採点項目」と「減点項目」が採用されています。
設問に沿った解答から得点を導き出し、誤った内容があればその分減点されてしまいます。
以下に「採点項目」と「減点項目」を記載します。特に厳しい減点対象である「大幅な文字数不足」「本文の要約になっている」という点には注意しましょう。
(※東京都教育委員会の「採点のポイント」には、『各学校において、部分点の基準を作成して部分点を定めること』と書いてあり、実際の学校が定める基準と異なる可能性もあります。)
<採点項目>
- 自分の意見、主張がある。(+4点)
- 筆者の主張を踏まえている。(+3点)
- 具体的な体験や見聞がある。(+3点)
<減点項目>
- 本文の抜き出しや要約になっている。(-10点)
- 論旨に一貫性がない。(-2点)
- 句読点の誤り、誤字、脱字、衍字(語句の中に間違って入った不要の字)が1つある。(-1点)
- 句読点の誤り、誤字、脱字、衍字が2つ以上ある。(-2点)
- 最後の一文が途中で終わっている。(-1点)
- 101字以上150字以内である。(-2点)
- 100字以内または201字以上である。(-10点)
- 不適切な箇所が1つある。(-1点)
- 不適切な箇所が2つ以上ある。(-2点)
以上のことから、採点において重視されるのは作文の内容だけではなく、「きちんと日本語として正しい形式で書かれているか?」ということであることがわかります。
次に、「採点項目と減点項目に関する「注意点」を具体的に解説します。
都立入試の作文で加点される内容は?
加点内容は以下の三つに分類されます。
- テーマ「新しい『何か』に出会うこと」に即した自分の意見、 主張が適切に書かれている。(自分の主張)
- 本文中の筆者の主張を的確に捉え、その主張を踏まえて、文章が適切に書かれている。(筆者の意見)
- 自分の意見、主張の根拠となる具体的な体験や見聞について、適切に書かれている。
(自分の意見の具体的な主張)
では、どのように自分の主張や筆者の主張を作成すれば良いのでしょうか。
自分の主張の書き方
採点項目の中で最も配点が高いのが「自分の主張」です。なぜなら作文とは、単に筆者の意見を要約したものではなく「自分の意見」を伝えるための文章だからです。
作文に対して苦手意識を持っている人の中には、「自分の意見は必ずしも独創的なものでなければならない」と考えている方もいらっしゃるようです。
しかし、作文では文章の内容というよりも、論理的な文章を書く能力が問われています。
そのため、一から自分の主張を考えるというより「筆者の意見に対して賛成か反対か?」ということをきちんと考えることが大切です。
自分の意見の書き方としては「筆者の意見に賛成(反対)です」「~だと思う」「~すべきだと感じます」「これからは~しようと思いました」などの形式が便利です。
また、都立の作文の形式は毎年大きく変わっていないことも注目すべき点です。
どの年度においても、自分の意見に含めるべき内容として「出来事の簡単な紹介」「印象的なこと」「自分の感情・感想」の3つが必要です。
ただし、年度によっては「印象的なこと」と「自分の感情・感想」のどちらを先に書くかという順番が異なることもあるので注意しましょう。
作文で重要な「筆者の意見」の書き方
「筆者の意見」では、本文の内容を正確に捉えられているかが問われます。
それを確かめるために、多くの質問文では「本文内の筆者の主張を読んだ上で意見を述べる」ということが指示されています。
また、200字作文で出題されるのは、「物語・小説」ではなく「説明文・論説文」です。なぜなら「説明文・論説文」には必ず筆者の思いや意見が書かれているからです。
そのため、文章を読んでいく中で筆者の意見を見つけた場合は、後から見返せるようにその箇所をチェックをすることを心がけましょう。
見つけるコツとしては、「~すべきだ」、「~することが必要だ」、「~と考える」、「~と言える」といった文末表現があると筆者の主張であることが多いです。
さらに、筆者の意見や主張が含まれている段落は「一番最初か最後の段落」であることが大半です。つまり筆者の意見を捉える場合には、必ずしも文章全体を丁寧に読む必要はないということ。
時間に余裕がないと感じる受験生は、まず「最初と最後の段落の第一文か最終文」を読むと良いでしょう。
作文のメイン「具体的な主張」のコツ
文章を書く上で一番時間がかかってしまうのが「具体的な主張」です。なぜなら、課題文と関連のある具体的な体験談を自分が持っているとは限らないからです。
しかし、実際に書く具体的な体験や見聞はオリジナルの話でも構いません。もしもそれでも「具体的な内容」が思い浮かばない場合は、本文中の内容を引用するのがオススメです。
例えば、平成28年度は「書」がテーマの本文ですが、作文の正答例でも体験談が「書ぞめ」になっています。このように、本文の例を自分の回答に引用として書くのも一つの方法です。
これ以外にも「以前ニュースで、~と聞いたことがある。」という、伝聞の形を取る方法もあります。その場合は、「~」のところに具体的な内容を入れましょう。
「具体的な主張」で失点してしまう理由としては、「具体的」という言葉の意味が正しく理解できていないことが挙げられます。
具体的とは「漠然とした言葉をより伝わりやすい情報に置き換えること」です。
以下の例を見てください。
(✕)私は色々な人と遊ぶのが好きで、多くの友人がいました。
↓
(〇)私は同級生だけでなく、先輩や後輩と遊ぶことが好きで、携帯の連絡先には約50人ほどの知り合いが登録されています。
(✕)私は、委員長を務めたときイベントをしたことがありました。
↓
(〇)私は今年、放送委員長になり、ラジオ好きな生徒を対象とした交流会を開催しました。
下線部が抽象的な言葉から具体的な言葉へ書き換えた箇所です。
「色々な人→先輩や同級生」という具体的な情報に直しています。また、「多くの友人→約50人」という具体的な数値での言い換えもあります。
このように曖昧な言葉を正確な情報や数値に置き換えることで、相手は自分の体験を想像しやすくなるはずです。
次は、減点項目の内容を見ていきましょう。
作文では何があっても字数制限の条件を守ろう!
条件を無視した場合が最も大きな減点の対象になりますが、その最たる例が「字数制限」。字数指定を守れなかった場合は大幅な減点の対象になると考えて良いでしょう。
字数が多すぎても、また少なすぎても大幅な減点が生じます。そのため「字数制限の80%以上、つまり160字以上」を目指しましょう。
また、一字でも字数を超えてしまうと、10点の減点を受けてしまいます。
減点されないための「原稿用紙の使い方」
原稿用紙の使い方の間違いも減点の対象となります。しかしこれは「基本」を丁寧にやることで、失点を防ぐことができます。
以下、原稿用紙の使い方を載せておきます。
原稿用紙の使い方
- 書き出し、段落の頭、改行した場合は一マス空けましょう。かぎかっこで始める場合も、最初のマス目は空けて、2マス目にかぎかっこを書きましょう。
- 句点、読点、かっこ類(「」、()、『』)は、すべて一字とみなします。また、句点とかぎかっこを一マスに一緒に埋めるのはOKです。
- かっこ類が行末、行頭にきてはいけません。
- 句読点が行頭にきてはいけません。行末の文字に句読点がつく場合、行末の文字と一緒に句読点を入れましょう。
- 縦書きの場合は、数字は漢数字(一、二、三、…)、横書きの場合は、算用数字(1、2、3、…)を使いましょう。
原稿用紙の使い方と同様に言葉の間違いも減点の対象となります。
特に減点の対象となりやすい漢字は正確に使用するようにしましょう。自信のない漢字であれば、ひらがなで書いた方が無難だと思います。
事前に時間配分を考えておこう!
入試作文の対策として、その字数を書き上げる時間を把握しておくといいでしょう。書き上げる時間とは、「原稿用紙に文字を埋める時間のこと」です。
その中に内容を考える時間や構成作成の時間は含みません。書く時間を制限時間から引いて時間配分を考えます。
残りの時間で「課題を理解する→作文の主題や結論を固める→書く順番を決める」という作業が終わるように時間配分を考えることが重要です。
この3つのステップはいずれも重要なものなので、それぞれどのくらいの時間が必要なのかをあらかじめ把握しておきましょう。
また、作文の構成や結論を考えながら書くのはできれば避けた方が良いです。
特に作文に慣れていない受験生は、全体の構成や論旨や順番を考えた上で書き始めることで焦らずに済むでしょう。
全体から見てどれくらい作文に時間を使えるか?
それでは200字作文にかけられる時間は、どれくらいあるのでしょうか?
東京都立高校入試の国語の試験時間は50分で、問題は5つの大問で構成されています。
[1] 漢字 読み 2×5=10点
[2] 漢字 書き 2×5=10点
[3] 物語 5×5=25点
[4] 説明文 5×4+10=30点
[5] 古文 5×5=25点
漢字を解くのに5分かかるとして、残り3題の各大問に使える時間は平均15分。大問4には、200字作文以外に小問が4つあるので、少なく見積もっても10分ほどの時間は必要です。
そのため、200字作文を「5分」で終わらせることが理想的と言えるでしょう。
作文は配点が「10点以上」あり、正しい文章が書ければ満点をもらえます。そのため、時間をきちんと確保して満点を狙うのが大切です。
試験直前に押さえておきたい作文の書き方
直前の対策として押さえておきたいのが、「2段落構成」です。この2段落構成が一番書きやすく、点数の取りやすい書き方だと言えます。
採点項目で見た通り、作文には基本的な構成として「自分の意見、主張」「筆者の意見」「具体的な体験や見聞」の3つを含みます。
そのため、「1段落目を具体的な体験や見聞」「2段落1文目を筆者の意見」「2段落2~3文目を自分の意見や、主張」にすると良いでしょう。
200字作文の場合、一般的な作文の書き方である起承転結や三段論法でまとめるのは難しいです。
なぜなら、200字という少ない字数制限の中で三段論法を使ってしまうと、形式的で内容の薄い文章になってしまうからです。
そのため、200字作文のでは一つ目の段落では、「文章を読んで自分が受けとめた内容」を書きましょう。
2つ目の段落では、「だから自分はこう考える」という結論的な内容を書くと良いでしょう。このように作成することで、まとまりがあり自分の意思を込めた作文となります。
200字作文は自分の意見を発表する場なので、具体的な体験・見聞の割合は多い方が良いでしょう。
「具体的な体験・見聞:主張・結論=7:3 or 8:2」というバランスがベストです。
また、「事前に書く型を決めておく」ということも、5分で200字作文を完成させるためのポイントです。
直前期に対策を行う受験生は「文章の書き方、書くパターンをあらかじめ決めること」に集中して問題を演習することをオススメします。
まとめ
以上、都立入試の作文の書き方を解説しました。大切なのは、「加点項目」と「減点項目」を理解した上で、自分の書き方を事前に習得することです。
書き慣れていない受験生は、何度も全体の構成を踏まえた文章を作成する練習をして見てください。