中学校の理科で「飽和水蒸気量」について学びます。
「水蒸気」「湿度」といった言葉は日常でも天気予報などで用いますが、その意味を正確に把握している人は比較的少ないのではないでしょうか。
そのあたりのことも含めて、中学理科・高校入試における飽和水蒸気量の勉強方法について解説します。
都立入試における飽和水蒸気量の問題の出題傾向
高校入試における飽和水蒸気量の問題を都立入試を例に挙げて解説します。過去5年を振り返ってみます。
過去5年の出題実績
2020大問2(問1)空気中に含まれる水蒸気と気温について
2018大問2(問2)雲のでき方について
2016大問2(問3)空気を冷やしたとき発生する水の質量
大問2のレポート問題でよく出題されている
5年で3回出題されていますが、いずれも大問2のレポート問題としての出題です。
都立入試理科におけるレポート問題は、身の回りのことに関する短いレポートが添付され、それにまつわる考察が出題されるという形式です。
飽和水蒸気量に関する身近な自然現象はたくさんあるので、飽和水蒸気量と相性がいいのでしょう。
都立に限らず入試で出題者が出題しやすいところだと言えるかもしれません。
飽和水蒸気量のところで押さえておくべき事項
次のことを押さえておくべきです。
- 「水蒸気量」とは
- 「飽和水蒸気量」とは
- 気温と飽和水蒸気量
- 「湿度」とは
- 空気の温度を下げたときに何が起きるか
- 生じる水滴の量
- 「露点」とは
- 飽和水蒸気量のグラフ
- 水蒸気と関係する身近な現象
以下、説明します。
「水蒸気」「湿度」とはどういう意味か
「水蒸気」や「湿度」は日常でよく使う言葉ですが、理科の立場から見るとあまり正確でない用い方がなされています。
例えば、やかんやポットから白い湯気が昇っているのを見て「水蒸気が湧いてる」などと言います。
しかし、水蒸気は無色透明の気体です。そのためあの白いモノは気体の水(水蒸気)ではなく、液体の水がミスト状に分布したものです。
このように、理科の立場からは湯気と水蒸気は異なるものです。
入試の知識として気体の水と液体の水の区別をすることは、飽和水蒸気量の学習において重要なのでしっかり区別したいところです。
また、「湿度」の意味を正確に理解している人は少ないでしょう。これは飽和水蒸気量に対する水蒸気量の割合です。この後説明します。
「水蒸気量」とは
空気の中には気体の水「水蒸気」が含まれています。「水蒸気量」はその量を表しています。空気1[m3]に含まれているグラム数[g]で表します。
したがって、単位は[g/m3]グラム毎立方メートルです。
例えば、1[m3]の空気に3[g]の水蒸気が含まれていたら、水蒸気量は3[g/m3]です。
「飽和水蒸気量」とは
1[m3]の空気が含むことができる水蒸気量の最大値を「飽和水蒸気量」といいます。単位は水蒸気量と同じ[g/m3]です。
冬の窓ガラスに水滴・結露が生じることがありますが、あれは空気がいくらでも水を含むことができるわけではなくて、限界があることを示しています。
例えば、20℃の空気は最大17.3[g]の水蒸気を含むことができます。
したがって、20℃の空気の飽和水蒸気量は17.3[g/m3]ということになります。
気温と飽和水蒸気量
飽和水蒸気量は空気の温度によって変化します。
20℃の空気の飽和水蒸気量は17.3[g/m3]で、10℃の空気の飽和水蒸気量は9.4[g/3]です。
飽和水蒸気量は温度が高いほど大きい値になります。
温度が高い空気の方がたくさん水蒸気を含むことができるということです。
「湿度」とは
飽和水蒸気量にたいして実際に含まれる水蒸気量の割合を「湿度」と言います。
20℃の空気(飽和水蒸気量は17.3[g/m3])にたいして水蒸気量が10[g/m3]だったら
(10÷17.3)×100=57.8%
と計算します。
天気予報でよく用いられる湿度とはこういう意味だったのです。
空気の温度を下げたときに何が起きるか
水蒸気を含む空気の温度を下げるとどういうことが起きるでしょうか。これは冬の窓ガラスの結露を思い浮かべると分かりやすいです。
水蒸気を含む空気が冷たい窓ガラスに触れることで温度が下がります。
先程述べたように、飽和水蒸気量は温度が下がると小さくなるものです。
そのため温度が下がっていくと、どこかの温度で飽和水蒸気量と水蒸気量が等しくなります。
さらに温度が下がると飽和水蒸気量より水蒸気量の方が大きくなってしまいます。
すると、何が起こるかというと、飽和水蒸気量より多い部分は水蒸気として存在できなくなって水滴となって現れます。これが結露です。
空気の温度を下げていくとどこかで水滴が生じ始める、これはとても大切なことなのでしっかり覚えておいてください。
生じる水滴の量
飽和水蒸気量より多い部分が水滴となって現れます。
例えば水蒸気量12.8[g/m3]の20℃の空気1[m3]を5℃まで冷やすと、5℃の空気の飽和水蒸気量は6.8[g/m3]ですから、生じる水滴は
12.8-6.8=6[g]
と計算されます。
「露点」とは
「露点」とは、水滴が生じ始める温度のことを指します。具体的にどのようになるのてしょうか?
例えば、水蒸気量12.8[g/m3]の20℃の空気の温度を下げていくことを考えてみましょう。
次のような飽和水蒸気量の表が与えられているとします。
気温[℃] 0 5 10 15 20 25
飽和水蒸気量[g/m3] 4.8 6.8 9.4 12.8 17.3 23.1
調べると15℃の空気の飽和水蒸気量は12.8[g]です。
したがって、15℃まで下げたところで湿度は100%になり、これ以上水蒸気を含むことができなくなります。それ以上温度を下げると水滴が生じます。
水蒸気量12.8[g/m3]の空気の露点は15℃だ、ということです。
飽和水蒸気量のグラフ
温度を横軸に、飽和水蒸気量を縦軸に取ったグラフがよく出てきます。
次のグラフは、水蒸気量12.8[g/m3]の空気の温度を下げていったときの様子を読み取ったモノです。
ブルーの部分が水蒸気を表し、グリーンが水滴を表しています。
水蒸気と関係する身近な現象
- 窓ガラスに結露
- 冷たいコップにできる水滴
- 雲ができる
- 夜露
以上のことなどが飽和水蒸気量と関係する自然現象です。
都立入試理科の大問2のレポート問題のような、身の回りのできごとを扱った問題によく取りあげられます。
飽和水蒸気量の問題のポイント
飽和水蒸気量の問題のポイントは、空気の温度を下げていったときに起きることをグラフから説明できるようにしておくことです。
空気の温度を下げていったときに起きることを理解しておく
水蒸気を含んだ空気の温度を下げていくと、だんだん湿度が上がり、どこかで湿度100%になり、それ以上下げると水滴が生じます。このことをしっかり理解しておきましょう。
表・グラフを読み取れるようにする
表・グラフから数値を読み取り、湿度、露点、生じる水滴の量を求められるようにしておきましょう。
飽和水蒸気量の勉強法
飽和水蒸気量をどのように学べばよいか説明します。
重要な言葉の意味を覚える
まず「水蒸気量」「飽和水蒸気量」「湿度」「露点」という言葉の意味を覚えることが大切です。
- 水蒸気量:空気1[m3]に含まれる水蒸気のグラム数
- 飽和水蒸気量:空気1[m3]が含むことができる水蒸気のグラム数の最大値
- 湿度:飽和水蒸気量にたいする水蒸気量の割合
- 露点:空気の温度を下げていったときに水滴が生じはじめる温度
- 空気の温度を下げていったときに起きる現象を理解する
空気の温度を下げていったときどのようなことが起きるかを理解しておきましょう。
そして、それを身の回りの現象と関係づけられるようにしておきましょう。
与えられた表やグラフ、関係を読み取れるようにする
飽和水蒸気量と温度の関係を表したグラフ・表を読み取り、湿度、露点、生じる水滴の量を求めることができるようにしましょう。
練習問題を繰り返す
以上に述べたようなことを念頭におきながら練習問題を繰り返すことが大切です。
まとめ
- 飽和水蒸気量の問題は高校入試理科で頻出である
- 「水蒸気量」「飽和水蒸気量」「湿度」「露点」という言葉の意味を正確に覚えることが大切
- 空気の温度を下げていったときに起きる現象を理解する
- 飽和水蒸気量と関係する身の回りの現象を説明できるようにする
- 湿度、露点、生じる水滴の量を求められるようにしておかなくてはならない