「イオン式・電離式をなかなか暗記できない…」
「実験内容を正確に理解できずにイオン式を求められない…」
などのように、イオンに関する問題に苦手意識を持っている受験生は例年多いです。
イオン問題はイオン式・電離式を暗記するだけでなく、問題文や実験内容を正確に理解した上で答えを導き出す必要があるため、実験内容への理解や考察力が求められます。
この記事では、イオン問題を対策するために「主要なイオン式・電離式」「高校入試における出題傾向」などを紹介をしていきます。
高校入試のイオン問題の出題傾向
高校入試においてイオンに関する問題は大問5によく出題されます。
イオン問題は実験から出題される傾向が多いので、イオン式を覚えるだけでなく教科書で学ぶような主要な実験の過程とその結果は押さえてください。
なぜなら答えを導き出すには実験内容を完璧に理解している必要があるからです。
一つでも曖昧に理解している内容があると失点に繋がります。実験の過程から結果まであらゆる知識を網羅しましょう。
また、以下のような化学反応式を答えさせる問題は高校入試において頻出であるため、しっかりと勉強する必要があります。
- 2020年度:大問5で物質Cを水に溶かした時の電離の様子を化学式とイオン式で解答させる問題
このようにイオン・物質の特性や実験内容を正確に理解した上で答えを導き出す力が求められます。
イオン問題を対策する時に注意するべきこと
イオン問題を対策する時は、イオン式・電離式を丸暗記する以外にもイオンの特性などを把握することで応用問題にも対応できるようになります。
ここからはイオン問題を対策するときに注意するべきことをまとめました。以下の内容は高校入試においてよく出題される内容なので重点的に対策してください。
原子とイオン
イオン分野を勉強するにあたって必ず原子の構造や特性は押さえておきましょう。
原子とは、それ以上分解できない物質の最小の粒子です。物質はこの原子が集まった形で構成されています。
構造としては中心に「原子核(+の電気)」があり、その周りに「電子(-の電気)」があります。
原子核の中にはさらに+の電気を持った粒子の「陽子」と、電気を帯びていない粒子の「中性子」で構成されています。
原子において押さえておくべき特徴は以下の内容です。
- 「電子(-の電気)」と「陽子(+の電気)」の数と電気の量は等しい
- 原子は化学反応によってなくなったり別のものに変わることはない
原子の中の電子と陽子の数が等しいことから、電気的に中性で原子としては電気を帯びていない状態になるのです。
この原子が電気を帯びたものをイオンと呼びます。さらに電子を失い+の電気を帯びると「陽イオン」に、電子を受けとり-の電気を帯びると「陰イオン」になります。
これらの知識は原子の特徴やイオン式を導き出す時に大いに役立ちます。必ず押さえておいてください。
中和反応
中和とは、性質が異なる酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液を混ぜた時にそれぞれの特性を失う反応のこと指します。
よく出る内容としては、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液をビーカー内で混ぜてBTB溶液の色の変化を見る実験です。出題傾向としては、イオンの数や水溶液の体積の変化に関する問題が出題されます。
実際に中和に関する問題としては、2016年度都立高校入試において水酸化ナトリウム水溶液の体積について求める内容が出題されております。そのため中和反応も必ず対策しましょう。
電気分解
高校入試において、塩酸の電気分解に関する問題は必ず対策してください。
よく出るのは塩酸ですが、難関校によっては食塩水の電気分解など教科書で載っていないような内容も出題されるケースもあります。
発展的な内容は過去問や難関校向けの問題集で対策するしかありません。
電気分解については「電流はどのように流れるのか」「陽極と陰極のそれぞれの電子の変化・反応式」を押さえましょう。
電気分解は物質の違いだけで実験内容自体は変わりません。なので教科書などで実験内容を理解し、問題集で出題傾向に合わせて対策しましょう。
化学反応式とイオン式
「化学反応式を求めなさい」という問題文の場合、化学反応式で回答する必要があります。この場合はイオン式を使わないので誤った解答しないように注意してください。
イオン式を求められる問題は「イオン式を求めなさい」「電離式を書きなさい」などという問題文です。電離の反応を解答する問題は、化学反応式とイオン式の両方を使います。
せっかく答えられるような内容でも、問題文の解釈の違いによっては誤った解答をする恐れがあります。問題文や図・表を正確に理解した上で解答しましょう。
よく出るイオン式・電離式
ここからは高校入試でよく出るイオン式・電離式の図を紹介します。
陽イオン
- 水素イオン→ H+
- ナトリウムイオン→Na+
- バリウムイオン→Ba2+
- カルシウムイオン→Ca2+
- アンモニウムイオン→NH4+
- 銅イオン→Cu2+
- 亜鉛イオン→Zn2+
- カリウムイオン→K+
陰イオン
- 塩化物イオン→Cl–
- 水酸化物イオン→OH–
- 硫化物イオン→S2-
- 炭酸イオン→CO32-
- 硫酸イオン→SO42-
- 酢酸イオン→CH3COO–
電離式 | |
塩化銅→銅イオン+塩化物イオン | CuCl2→Cu2++2Cl– |
塩化水素→水素イオン+塩化物イオン | HCl→H++Cl- |
塩化ナトリウム→ナトリウムイオン+塩化物イオン | NaCl→Na++Cl– |
水酸化バリウム→バリウムイオン+水酸化物イオン | Ba(OH)2→Ba2+2OH– |
水酸化ナトリウム→ナトリウムイオン+水酸化物イオン | NaOH→Na++OH– |
水酸化カルシウム→カルシウムイオン+水酸化物イオン | Ca(OH)2→Ca2+++2OH– |
硫酸→水素イオン+硫酸イオン | H2SO4→2H+SO42- |
硝酸→水素イオン+硝酸塩 | HNO3→H++NO3 |
酢酸→水素イオン+酢酸イオン | CH3COOOH→H++CH3COO– |
イオン式・電離式の覚え方
イオン式・電離式の覚え方は式の法則を覚えましょう。
例えば化学式の左側が陽イオン、右側が陰イオンになります。また、式を導き出す際は電子と陽子の数と電気の量は等しいという法則も考慮しましょう。
語呂合わせについては調べればネットで出てきますが、イオン式・電離式自体が語呂合わせに向いていないので覚えやすい内容はあまりありません。
暗記や問題演習を地道にこなすことによって式を定着させましょう。
直前期のイオン問題の対策
直前期のイオン問題の対策方法としては、主要なイオン式・電離式はできる限り覚えておきましょう。
イオン式・電離式を導き出す問題は出題内容の傾向が決まっているため、よく出る反応式を暗記するだけでもある程度の問題は対策できます。
上記の覚え方でまずは式を暗記するところから始めましょう。
まとめ
イオンに関する問題はイオン式・電離式など暗記要素もありつつ、主要な実験の過程・結果を押さえる必要があるため、暗記から問題に合わせた知識の活用まで幅広く対策する必要があります。
しかし、出題傾向はある程度決まっているため、よく出る実験内容をマスターしてしまえば得点源に繋げられる分野です。
最初はどうしてもとっつきにくいと思いますが、高校入試においてイオンは頻出問題なので必ず対策しましょう。