「状態変化」は高校入試でも頻出の分野です。
「ヤカンの水が沸騰する」「氷が溶ける」このような普段何気なく見かける現象を科学的に捉えるのがこの分野です。また、氷が水に浮かぶという当たり前だと思っていることが特別な現象であることも学びます。
ここでは、状態変化の入試傾向や勉強法に加えて「なぜこんな当たり前のことをわざわざ勉強するのだろう」という疑問にもお答えします。
高校入試理科における状態変化の問題の出題実績
まず、高校入試において状態変化の問題がどの程度出題されているのかを見ておきましょう。ここでは過去5年の都立入試を例にとります。
2020年大問2〔問2〕凍結防止剤と水溶液の状態変化について
2016年大問2〔問4〕水と氷の密度・質量・体積
このように過去5年で2回出題されており、状態変化の問題は頻出です。
状態変化のところで押さえておくべき事項
状態変化の分野で押さえておくべき事項は次のようなことです。
- 状態「固体」「液体」「気体」
- 状態変化
- 状態変化と質量・体積
- 状態変化と温度
順を追って説明します。
状態「固体」「液体」「気体」
水には固体の氷、液体の水、気体の水蒸気の3つの状態があることはご存知かと思います。
このように物質には「固体」「液体」「気体」の3つの状態があります。
ところで「固体とは何か?」と問われて正確に答えられる人は意外に少ないのではないでしょうか。
以下の説明を読めば答えられるようになります。
物質は小さな粒子が集まってできています。
- 「固体」は、その構成粒子が互いに強く拘束しあって動けない状態です。
- 「液体」は、構成粒子が拘束しあっているが、固体ほど強くは拘束されておらず、比較的自由に動ける状態です。
- 「気体」は、構成粒子が拘束しあっておらず、完全に自由に動ける状態です。
また、構成粒子は温度が高いほど激しく運動しています。
この運動がもっとも穏やかな状態が固体、もっとも激しい状態が気体ということもできます。
状態変化
氷を部屋に放置すると溶けて水になりますね。また、水を冷凍庫に入れておくとやがて氷になるでしょう。
このように、固体、液体、気体間で互いに状態が変化することを「状態変化」と呼びます。
各状態変化を区別するために名前がついています。例えば、固体が液体になることは「融解」といいます。
この状態変化の名称は試験に頻出です。しっかり覚えましょう。各状態変化の名称は次の図で覚えてください。
各状態変化について解説します。
蒸発・沸騰、凝縮
気体が液体に変化する状態変化を「凝縮」といいます。「水蒸気が凝縮して水になる」などと表現をします。
そして、液体が気体に変化する状態変化には「蒸発」「沸騰」の2通りあることを押さえておきましょう
コップに水を入れて部屋に放置しておくと、水は自然にゆっくり気体になっていきます。このように液体表面から気体になっていくことを「蒸発」といいます。
それに対して、水をヤカンに入れて加熱すると、やがて液体の内部からブクブク気泡が現れますね。このように液体内部から気体になることを「沸騰」といいます。
蒸発と沸騰の区別ができるようにしておきましょう。
融解、凝固
固体が液体になることを「融解」といいます。
「氷が融解して水になった」というふうに表現します。
液体が固体になるのが「凝固」です。
「水が凝固して氷なった」という表現ですね。
融解と凝固をセットで覚えましょう。
昇華
ドライアイスが気体になっていくのを目にしたことがあるでしょう。
あれは、固体から気体に状態変化することがあるということを意味しています。
「固体から液体になるか」「固体から気体になるか」どちらの状態変化が起こるかは周りの気圧によって決まります。
例えば、私たちの日常程度の気圧で固体から気体に状態変化する物質は、ドライアイス(二酸化炭素)、ナフタレン(防虫剤に用いられる)などです。
このような、固体から気体への状態変化、気体から固体への状態変化は両方とも「昇華」といいます。
状態変化と質量・体積
状態変化に伴う質量変化・体積変化を調べてみましょう。
状態変化をしても物質の質量は変化しません。
しかし、体積は変化します。このような状態変化に伴う体積変化を学ぶとき、水と水以外の物質に区別して学ぶことが大切です。
それでは具体的にそれぞれどのような変化が行われるのでしょうか?
水の体積変化
他の物質が液体から個体に変化すると密度が増加するのに対して、水は密度が減少します。
別の言い方をすると、他の物質とは異なって水は液体から固体に変化すると体積が増えるのです。
だから、氷は水に浮かびます。この当たり前だと思われる現象は特別なことだったのです。
水の各状態と質量、体積、密度の大小関係は次のようになります。
- 質量:固体=液体=気体
- 体積:固体>液体<気体
- 密度:固体<液体>気体
水以外の物質の体積変化
先ほど、固体と気体では気体の方が構成粒子の運動が激しいと述べました。そのことから固体と気体では気体の方が体積が大きいと推測できます。
当然、固体と液体では液体の方が体積が大きく、液体と気体では気体の方が体積が大きいということになります。
質量が同じで体積が大きいということは、密度(つまり具合・ぎゅうぎゅうさ)は小さいということです。
各状態と質量、体積、密度の大小関係を表すと
- 質量:固体=液体=気体
- 体積:固体<液体<気体
- 密度:固体>液体>気体
このようになります。
この事実から言えることがあります。それは、ある物質の液体に同じ物質の固体を入れると沈むということです。なぜなら、固体の方が密度が大きいためです。
おそらく、普段氷が水に浮かぶという現象を目にしているので、固体が液体に沈むと言われると違和感があるのではないでしょうか。
実は、水は他の物質に比べて特殊な物質だったのです。
水と他の物質の違いはよく試験に出題されるのでしっかり学んでおきましょう。
状態変化と温度
物質に熱を加えていったとき状態変化が起こりますが、その際の温度変化を調べてみましょう。
次の図を見ながら学んでください。水を加熱していったときのグラフです。
固体を加熱していくと固体の温度が上がります。やがて融解が始まります。融解が起こっている間は温度が一定です。そして融解中は固体と液体が共存した状態になります。
融解が進んですべて液体になると、再び温度上昇が始まります。
液体の温度が上がると、やがて沸騰が始まります。沸騰の間は温度が一定です。沸騰中は液体と気体が共存した状態になります。
沸騰が進んですべて気体になると、再び温度上昇が始まります。
融解中、沸騰中温度が一定になる理由は、熱が状態変化を生じさせるためにのみ使われるからです。
このグラフが意味することを理解できるようにしておきましょう。
融点
融解が起こっている間は加熱しても温度は変化しません。この温度を「融点」といいます。
水(氷)の融点は0℃です。
沸点
沸騰が起こっている間は加熱しても温度は変化しません。この温度を「沸点」といいます。
水の沸点は100℃です。
水以外の物質を加熱していったときの温度変化のグラフも、0℃、100℃といった数値は違いますが同様な概形のグラフになります。融点、沸点で温度一定のグラフです。
状態変化の例題
<例題>次の①②の選択肢の中から正しいものを選べ。
氷に熱を加えるとやがて①(融解・凝固・沸騰・昇華)が起こり液体の水に変化していく。氷は液体の水より密度が②(小さい・大きい)ので、水に浮かぶ。
<解説>
固体が液体に変化する現象は「融解」(①)です。
また、氷は水より密度が小さいので水に浮かびます。②の答えは「小さい」です。
状態変化の問題のポイント・勉強法
状態変化のところでは押さえておくべきポイントがたくさんあります。それぞれ勉強法を解説します。
「融解」「融点」といった用語を正確に覚える
状態変化の分野では覚えておくべき用語がたくさんあります。
「融解」「凝固」「沸騰」「蒸発」「凝縮」「昇華」「融点」「沸点」
すべて正確に覚えておかなければいけません。
現象を正しく説明できる
状態変化を言葉で正しく説明できる必要があります。
「固体を加熱すると融解して液体になる」といったことがスラスラ出てくるようにしておきましょう。
状態変化と体積変化、質量変化の関係を理解する
「状態変化に伴って体積は変化するが、質量は変化しない」このことを説明できるようになっておかなければいけません。
「液体が気体に変化すると体積が大きくなり密度は小さくなる」というふうに説明できるといいですね。
水は特別
水が特別な物質であることは試験に頻出の内容です。
「どうして氷は水に浮かぶのか」を密度や体積を交えながら説明できるようになっておきましょう。
状態変化と温度変化
物質に熱を加えていったとき、どのように温度変化が起こるのかを覚えておかなくてはいけません。
グラフを見て視覚的に説明できるとよいでしょう。
融解している間、沸騰している間は温度が変化しないことは特に注意して覚えておいてください。
まとめ
- 物質の状態には「固体」「液体」「気体」がある
- 物質は加熱・冷却に伴って状態変化する。状態変化には「融解」「凝固」「蒸発」「沸騰」「凝縮」「昇華」といった名前がついている。
- 状態変化に伴って、物質の質量は変化しないが、体積は変化する。体積の変化の仕方は水と水以外の物質で異なる。
- 融解している間、沸騰している間は物質の温度は変化しない。その温度をそれぞれ「融点」「沸点」という。