都立高校入試の理科では、地学・生物・化学・物理の理科全分野から幅広く出題されます。
覚える内容も多いですが、知識をしっかりと理解した上で解答する力が求められる科目なので、マスターするのにある程度時間がかかります。
範囲も広くマスターするのに時間がかかるため、出題傾向を分析して計画的に勉強しないと苦手分野が試験本番で足を引っ張ってしまう可能性があるのです。
この記事では、都立高校入試の理科の出題傾向と対策について紹介します。
都立高校入試(理科)の傾向分析
まずは都立高校入試の理科の出題傾向を知ることが大事です。
問題の構成と出題傾向、難易度などを傾向分析してまとめました。
都立高校入試(理科)の大問構成と出題範囲
都立高校入試の理解の大問構成は以下のようになっています。
大問1:小問集合(全24~28点)
大問2:レポートの小問集合(全16点)
大問3:地学(全12~16点)
大問4:生物(全12~16点)
大問5:化学(全12~16点)
大問6:物理(全12~16点)
全部で大問6つという構成は15年以上変わっていません。
しかし、各年度によって配点比率にバラツキがあるので、どの大問に比重が置かれるかは年度によって変わります。
大問3~6で共通する出題傾向ですが、各分野の範囲がまんべんなく出題されるわけではなく、年度別に各分野の中から特定の内容が出題される傾向があります。
例えば地学であれば「地質」「気象」など数多く分野がある中で、この年は「天体」、この年は「天気」といった形です。
また、東京都教育委員会から2021年度の入試以降は以下の分野が出題されないと発表されました。
- 『運動とエネルギー』の「力学的エネルギー」
- 『科学技術と人間』
- 『地球と宇宙』の「太陽系と恒星」
- 『自然と人間』
ここからは各大問別の詳しい内容について紹介します。
大問1:小問集合(全24~28点)
大問1は都立高校入試の理科の大問の中で最も配点比率が高いです。
地学・生物・化学・物理の理科全分野から幅広く出題されます。
内容としては基礎的な知識を問う問題が多く、短い設問の4択問題が中心です。
難易度は教科書レベルなので、すべての分野をまんべんなく勉強しましょう。
大問2:レポートの小問集合(全10点)
大問2では自由研究レポートをテーマに出題されます。
大問1と同じように各分野が幅広く出題されます。しかし、大問1と違うのは「レポートを読まなければ問題が解けないため、知識だけでなく内容を正確に理解する力が求められる」という点です。
身の回りの出来事や実験などの内容が出題されるので、レポートのテーマ自体は何が出るかわかりません。あらゆる問題に対応できるように過去問や問題演習の数をこなしましょう。
また、問題文は長いためにレポートの理解に時間をかけるとあっという間に制限時間が迫ってきてしまうので、時間配分には注意してください。
大問3:大問3:地学(全12~16点)
地学は地質・気象・天体などの分野が出題されます。全部で3~4問の出題となっており、いずれも4択の選択問題です。
2020年度は「天体」が出題され、2019年度は「地質(地震)」が出題されています。
これは大問3~6で共通する出題傾向ですが、過去5年の傾向を見ても同じ分野が2年連続で出題されることはないので、翌年度(2021年度)は「天体」以外が出題される可能性が高いです。
大問4:生物(全12~16点)
生物は植物・人体のつくり・細胞分裂・遺伝の法則などの分野が出題されます。
令和2年度は「人体のつくり」から出題されたので、翌年度はそれ以外の分野の対策をしましょう。
他の分野にも当てはまりますが、生物は実験観察問題が中心になります。
例えば光合成の実験の手順や結果、使われる実験器具などを解答する必要があります。
基本的には教科書に載っている実験観察の内容が多いため、参考書や問題集でしっかり対策していれば比較的に得点に繋がりやすい分野です。
大問5:化学(全12~16点)
化学は各分野の中でも最も出題範囲が広く、翌年度の出題傾向が予測しにくい大問です。
理科の分野の中でも化学は特に苦手と感じている人も多いでしょう。
化学も生物と同様に実験に関する問題が多いです。なので、実験器具の名称だけでなく、配置図や使用方法、実験の結果などのプロセスをすべて覚える必要があります。
他にも、水溶液の濃度計算など計算問題も出されます。表や図を読み取った上で計算する必要があるため、ある程度慣れが必要です。慣れるためにも問題集に取り組みましょう。
また、元素記号や化学反応式はしっかり勉強すれば得点に繋がりやすいので、漏れなく対策しましょう。
大問6:物理(全12~16点)
物理も化学と同じく苦手な人が多い分野です。
物理は回路と電流・運動とエネルギーの分野から出題されます。
2020年度は「回路と電流」から出題されたので、翌年度は「運動とエネルギー」の分野から出題される可能性が高いです。
当記事の序盤にもまとめましたが、運動とエネルギーの力学的エネルギーは2021年度入試から除外されます。
計算問題があるので苦手な方は対策が必要ですが、覚える公式や法則は少ないため、問題集や過去問に取り組んでいれば十分に対応できます。
都立高校入試(理科)の難易度
過去5年分の平均点の推移
2020年 53.4点
2019年 67.1点
2018年 61.5点
2017年 55.9点
2016年 50.6点
都立高校入試の理科の平均点は、過去10年間で50〜60点の間を推移しています。
平均点の変動も大きく、その年の難易度がそのまま平均点に反映されます。直近だと平成28年度入試では、平均50.6点と他の科目と比較してもかなり低いです。
ここ数年は平均点60点を超えましたが、記述式問題の影響か2020年度は平均点53.4点でした。
2019年度の平均点は67.1点だったので、かなり平均点の変動がある科目です。
このように各年度ごとに難易度は大きく違うため、難易度が予測しにくく他の科目と比べて難しいです。
教科書の範囲を超える問題はないですが、地学・生物・化学・物理の全分野から幅広く出題されます。苦手分野を残したまま試験に臨むと大きく失点する可能性があるため、まんべんなく知識をつけましょう。
ただし、各年度で連続して同じ分野の問題が出題されることはないので、出題傾向に合わせて対策しやすい科目です。
また、2020年度では記述式問題の割合が増えたため、単語の意味を説明したり、内容を理解した上で論理的にまとめる力などが求められています。
都立高校入試(理科)解答の際の時間配分
都立高校入試の理科の制限時間は50分です。解答の際の時間配分ですが、以下の配分で解くことをオススメします。
大問1:小問集合(6分)
大問2:レポート問題(8分)
大問3:地学(9分)
大問4:生物(9分)
大問5:化学(9分)
大問6:物理(9分)
解く順番はあまり意識しなくても大丈夫ですが、大問1・2はなるべく早く解いて他の大問に取り組む時間を確保しましょう。
難しい問題に時間をかけるよりは、解く順番にこだわり過ぎずに解きやすい問題から解く方が効率がいいです。
都立高校入試(理科)の対策と勉強法
都立高校入試の理科は地学・生物・化学・物理の4分野まんべんなく出題されます。
したがって、苦手分野をあらかじめ対策しておくことでどんな問題が出ても対応できるようにする必要があります。
ここからは理科の時期別の対策と勉強法について解説します。
中1・中2のうちにやっておきたい対策
中1・中2は定期テスト対策や授業の復習などをしっかりと行い、学校で学んだ内容を確実に定着させましょう。
ここで注意するべきことは、苦手分野を放置しないようにしてください。なぜなら、放置してしまうと中3になった時に苦手分野のリカバリーに時間を取られてしまうからです。
余計な勉強時間を取られないように、中1・中2のうちに理科の基礎を固めておきましょう。
中3の夏前までにやるべき対策
中3の夏休み前までには、学校で習う理科の全範囲を復習しましょう。ここで基礎を固めることで次のステップとして問題演習に取り組むことができます。
また、苦手分野がある方は今のうちにリカバリーを済ませておいてください。
理科で習う内容は暗記しただけでは問題を解けるようになりません。問題の意図や仕組みの理など「学んだ知識をしっかり理解しているか?」が重要です。
理解するまでに時間はかかりますが、ここでしっかりと理解を深めておけば、あらゆる問題に対応できる応用力を身につけられます。
夏休みまでには苦手分野の対策を済ませましょう。
中3の夏休みにやるべき対策
夏休みは高校受験の期間の中で最も長い休暇になります。
夏前までに学んだ知識を活かして問題演習を中心に取り組みましょう。
また、塾に通っていない人は夏期講習を利用してもいいでしょう。
塾の先生にわからない箇所を指導してほしい、集中できる環境として自習室を利用したい人はぜひ検討してみてください。
中3の秋に取り組むべき対策
夏休み以降は都立高校の理科の出題傾向に合わせた対策を中心に取り組みましょう。
具体的には、秋から受験直前期にかけて過去10年分の過去問を最低2~3周してください。
また、ここまでで苦手分野はないか?理科の全範囲を理解できているか?を改めて振り返ることが大事です。
過去問演習を通して苦手分野が浮き彫りになるので、間違えた問題は解説を読み込み、必ず何度も復習しましょう。
中3冬・受験直前期に取り組むべき対策
受験直前期も引き続き過去問を解いてください。新しい参考書・問題集は買わずに今まで習ってきたことを完璧にすることが大事です。
なぜなら、参考書・問題集を一周しただけではすべての内容を覚えきれないからです。
過去に間違えた問題があれば再度解くなど、何度も復習することでやっと自分の知識として身につけることができます。
過去問演習を中心にこれまで習ってきた内容を復習して受験本番に備えましょう。
まとめ
都立高校入試の理科は、各分野まんべんなく出題されるために捨て問題は作れません。
配点比率も各年度によって変わるため、苦手科目を残しておくと大失点をしてしまう可能性が高くなり、他の科目の足を引っ張りかねません。
理科は理解するのに時間がかかりますが、一度理解してしまえば得点源になりうる科目です。
夏休み中までにはしっかりと理科全範囲を知識を固めて、過去の出題傾向に合わせて対策しましょう。