みなさんは栽培漁業と養殖漁業の違いについて理解できていますか?
日本は海に囲まれた島国であり、漁業大国といわれてきました。
そのため漁業の種類も豊富なので、それぞれの特徴や違いをはっきり捉えておく必要があります。
この記事では、とくに混同しやすい栽培漁業・養殖漁業について詳しく説明します。
栽培漁業・養殖漁業とは
栽培漁業・養殖漁業はいずれも人の手を使って魚介類の育成をたすける漁業です。
- 魚介類を確実に供給できる
- 将来にわたっての安定的な利用ができる
といったメリットがあります。
栽培漁業と養殖漁業の違いは「どこまで人が育てるか」という点です。
では、まず栽培漁業と養殖漁業それぞれについて詳しく見ていきましょう。
栽培漁業
栽培漁業とは、海底に魚が集まる漁場を作ったり稚魚や稚貝を放流したりして、沿岸の漁業資源を増やそうとする漁業です。
例えば、オホーツク海沿岸ではほたての栽培漁業が行われています。
ほたての稚貝を人の手で3~5cmの大きさに育てたあと海に放流し、海で4年間育ててから収獲します。
このように、栽培漁業は魚介類の生育を人が手助けするイメージです。
少し人の手を加えるものの、なるべく自然に近い状態で育てるというのが養殖漁業との違いです。
デメリットは、自然に任せる部分があるため、海の中で魚介類がほかの場所へと逃げてしまうこともある点です。
しかし、自然に近い状態で育てるため高品質な魚介類が育つというメリットがあります。
養殖漁業
養殖漁業とは、魚介類をいけすやいかだなどで育てて増やす漁業です。
栽培漁業との違いは、放流せずに出荷まですべて通して人が育てるという点です。
日本ではほたて・こんぶ・かきなどの養殖が盛んで、リアス式海岸などで行われています。
リアス式海岸については別記事で詳しく解説していますので、そちらも読んでみてくださいね。
養殖漁業は養殖業ともいいます。
人の手を使って魚介類を育成するという点は栽培漁業と共通していますが、栽培漁業は途中で人の手を離れて放流するのに対し、養殖業は一貫して育てるのがポイントです。
日本の漁業について
それでは、なぜ海のものである魚介類に人が手を加える方法が盛んになってきたのか見ていきましょう。
この理由を知るためには日本の漁業の変遷を知ることが大切です。
日本の漁業はかつて、沖合漁業や遠洋漁業が盛んでした。
沖合漁業は陸から離れた沖合で行う漁業で、遠洋漁業はそれよりさらに離れた海域で行う漁業です。
しかし、排他的経済水域の重なるロシアなどの国々が漁業権を主張したことで、日本の遠洋漁業の漁獲量は減少していきます。
さらに日本近海の沖合漁業でも不漁が続きました。
そこで市場に魚介類を安定供給するため、栽培漁業や養殖漁業が活発に行われるようになりました。
このように、水産資源を守りながら海の恵みを持続的に受けるために、日本の漁業のあり方は模索されています。
栽培漁業・養殖漁業の出題傾向
栽培漁業・養殖漁業は日本の漁業の変遷に大きく関わっているため、漁業の種類を表したグラフの変化などと合わせて問われることがあります。
また、遠洋漁業ではマグロなどの大きな魚を獲っていますが、栽培漁業・養殖漁業では稚魚から育てられるマダイや貝類、わかめなどの海藻類が多いです。
こうした魚介類の種類の違いも合わせて出される可能性があります。
また漁港の周りには水産加工場が集まっており、そこで加工された食品が国内外に出荷されています。
このように、漁港周辺の産業も一緒に覚えておきましょう。
なお養殖業はリアス式海岸で盛んにおこなわれていますが、水産物の漁獲量第1位は日本海・太平洋・オホーツク海の3つの海に囲まれている北海道であることも押さえておきましょう。
栽培漁業・養殖漁業の入試問題を解いてみよう
それでは、実際の入試問題を解いてみましょう。
次の問題は、平成28年度都立高校入試大問2から抜粋したものです。
”次の略地図を見て、あとの問に答えよ。
次の表のア~エは、略地図中に網掛けで示したW~Zのいずれかの国の、2012年における人口、国民総所得、牛、豚及び羊の家畜頭数、漁獲量、日系現地法人数を示したものである。略地図中のWに当てはまるのは、表のア~エのうちのどれか。
”
では、さっそく解いていきましょう。
まず、表の中で他と桁の違う特徴的な部分から着目していきましょう。
アは他に比べて豚の家畜頭数が極端に少なくなっています。
牛や羊は利用するのに豚だけ利用しないのは、イスラム教が多いYのエジプトです。
続くイは、牛の家畜頭数が他より多いものの、これだけではW, X, Zのいずれであるかは判別できません。
先に他の選択肢を見てみましょう。
国民総所得が飛びぬけて多いウは、先進国であるZのイギリスです。
エは羊の家畜頭数が少ないのも特徴ですが、日系現地法人数の多さに着目してみましょう。
残る選択肢のWとXのうち、日系現地法人数が多いのはどちらでしょうか。
日本企業の進出が活発なのは、日本から近い東南アジアのタイですね。
そう考えてエの漁獲量の多さに着目すると、タイで盛んなエビの養殖業が背景にあると考えられます。
よってエはXとなり、残るイがWに当てはまります。
正解はイです。
このように、漁業の知識は他の知識と組み合わせて出題されています。
また日本に限らず世界の漁業も取り上げられますが、国内の漁業について詳しく理解することで応用できるようになりますよ。
栽培漁業・養殖漁業の直前対策法!
それでは具体的に、栽培漁業・養殖漁業の直前対策としてどのようなことに取り組めば良いのでしょうか?
魚介類の種類を一緒に確認する!
前述のとおり、栽培漁業・養殖漁業についてのみ限定的に問われることは少ないです。
他の漁業である遠洋漁業や沖合漁業についての知識も一緒に押さえておきましょう。
その際、漁の種類によって獲れる魚介類に違いがあることに注目しましょう。
表などで具体的な魚や貝の名前を見て、どの漁法か判断できるようになっておくと心強いです。
資料集は手元に置いて、何度も目を通しながら覚えていきましょう。
まとめ
栽培漁業・養殖漁業が理解できたでしょうか?
共通点と違いを意識しながらキーワードを押さえていけば難しくありません。
この記事で栽培漁業・養殖漁業の理解を進めましょう!