言葉だけで理解しようとすると「まっすぐ進むはずの光が曲がる…?」と混乱してしまいがちな屈折。
ここでは図を使ってわかりやすく説明していきます。
ぜひ実際に手を動かして、図を描く練習をしながら学んでみてください!
屈折とは
空気とガラスや空気と水など「異なる物質の境界面で光が折れ曲がって進む現象」を「屈折」といいます。
同じ物質の中にいる間は光がまっすぐ進むことをおさえておきましょう。
屈折を理解する上で覚えておきたいポイント!
概要がつかめたところで、ここからは屈折を理解するために押さえておきたいポイントをご紹介します。
- ポイント①光が曲がって見える例を見てみよう
- ポイント②屈折に関する用語を覚えよう
- ポイント③「光の道すじ」を図に描いて考える
- ポイント④入射角と屈折角の大小関係を覚えておこう!
- ポイント⑤屈折が大きくなると全反射になる!?
では、順番に見ていきましょう。
ポイント①光が曲がって見える例を見てみよう
屈折の例として、次のようなものが挙げられます。
- 厚いガラスを通して見た鉛筆→実際の位置からずれて見える
- 水の中に入れたストロー→水面で折れ曲がったように見える
- カップの底においた硬貨→水をそそぐと見えるようになる
光はまっすぐ進むはずなのに、どうして曲がって見えるのでしょうか?
それは、物質の境目で光が「屈折」しているからです。
空気とガラスや空気と水など「異なる物質の境界面で光が折れ曲がって進む現象」を「屈折」といいます。
反対に、同じ物質の中にいる間は光がまっすぐ進むことをおさえておきましょう。
ポイント②屈折に関する用語を覚えよう
ポイント①で見た屈折の様子から、屈折している部分だけを切り取って図にしたものがこちらです。
このとき、屈折した光を屈折光といいます。
そして、物体の境界面に垂直な線と屈折光との間にできる角を屈折角といいます。
このあたりは入射光と入射角、反射光と反射角の関係と似ていますね。
ちなみに光は境界面ですべて屈折するのではなく、一部は反射しているので反射光も示しています。
入射角=反射角となる反射の法則は前の単元で習ったはずなので、よく分からない方はおさらいしておきましょう。
ポイント③「光の道すじ」を図に描いて考える
ポイント②で見たように、「光の道すじ」を図にすることが屈折を理解するコツです。
ここでは、図を描く手順に沿ってポイントを整理しておきましょう。
図を描くときのポイント!
この図を描くときのポイントは2つあります。
1つめは「境界面と光が交わるところに垂線を引く」こと。
2つめは「光と垂線との間にできる角」に注目することです。
境界面が2つある場合
続いて、少しややこしい例を考えてみましょう。
先ほどは物質が2つ(境界面が1つ)でしたが、境界面が2つになるとどうでしょうか?
ここで注目したいのは、空気→ガラス→空気と光が進んだ場合、空気中での光の進む向きは平行になるという点です。
図で言うと、AB間の光の向きとCD間の光の向きが平行です。
これを目が錯覚して、屈折光の延長上から直進してくるように見えるのです。
ちなみにここでは省略していますが、境界面2でも一部の光は反射します。
その光が境界面1に辿り着くと、そこでさらに反射と屈折が起こります。
ただ、何度も反射や屈折を繰り返していくうちに光が弱まって見えなくなるので、そこまで考えることはほとんどありません。
ポイント④入射角と屈折角の大小関係を覚えておこう!
ここで、入射角と屈折角の関係を整理すると次のようになります。
空気中→ガラスや水・・・入射角>屈折角
ガラスや水→空気中・・・入射角<屈折角
どちらに進むかで入射角と屈折角の大小関係が変わることがわかります。
光の進む向きが逆になるとどうなる?
先ほどの図で、空気中での光の進む向きは平行になっていましたね。
そのため、光の向きが逆になっても下の図のように同じ経路をたどります。
この図をさっきの図と見比べてみると、なんだか不思議に思えてきませんか?
実は、同じような図なのに「入射角」と「屈折角」が入れ替わっているのです。
ややこしくならないように「境界面に入るほうが入射角、境界面から出るときは屈折角と呼ぶ」としっかり覚えておきましょう。
この状態で入射角と屈折角の大小関係を考えるとき、さっきのように
空気中→ガラスや水・・・入射角>屈折角
ガラスや水→空気中・・・入射角<屈折角
と覚えようとすると頭がこんがらがってしまいます。
そこでひとつ覚え方をご紹介します。
空気は大気とも言いますよね。
「大気(空気)側の角度がいつも大きい」と覚えておきましょう。
もし忘れてしまったときは、あせらずにカップの中においた硬貨の図を描いてみましょう。
ポイント⑤屈折が大きくなると全反射になる!?
入射角と屈折角の大小関係がわかったところで、入射角を変えると屈折角がどう変化するか考えてみましょう。
ここでは、水中から空気中に進む光を考えてみます。
「空気中の角度がいつも大きい」ので、この場合の光の道すじはこのようになります。
ここから入射角をどんどん大きくしていってみましょう。
入射角が大きくなりすぎると、入射角より大きな屈折角はさらに大きくなります。そのため屈折できなくなり、光がすべて反射します。
このように、光が屈折せずすべて反射する現象を「全反射」といいます。
全反射をしている例は水中から見える景色や光ファイバーなどがあります。
実際にどのような問題が出題されるのか?
それでは実際の入試問題を解いてみましょう。
以下の問題は、平成31年度都立高校入試の大問1から抜粋したものです。
“下の図は、光源装置、直方体のガラス、鏡を固定し、光源装置の点Aから直方体のガラスに入射するまでの光の道筋を表している。鏡の面は、直方体のガラスの一面に密着させている。直方体のガラス内に入射した後の光の道筋を表したものとして適切なのは、下のア~エのうちではどれか。ただし、下図及びア~エで示した記号a, b, cは、それぞれ異なる大きさの角を表すものとする。”
では、早速解いていきましょう。
空気とガラスの境界面に光が入射するとき、空気側の角度がいつも大きいことを学びましたね。
そして、その際に考える角度は「光と垂線との間にできる角」でした。
よって、空気側の光と垂線との間にできる角がガラス側の光と垂線との間にできる角よりも大きいウとエに絞られます。
その先の光の道筋を見ると、鏡の面で反射することがわかります。
反射の際には境界面の材質によらず「入射角=反射角」となるので、正解はウです。
屈折の勉強方法について
問題の感覚がつかめたところで、勉強方法をまとめましょう。
図に描く練習をしよう
さて、少しひっかけ問題を出してみましょう。
次の図で入射角、反射角、屈折角はどこでしょうか?
答えは①が入射角、④が反射角、⑤が屈折角・・・・・・ではありません。
正解は②が入射角、③が反射角、⑥が屈折角です。
垂線との間ではなく、境界面となす角と勘違いしていないでしょうか?
ポイント③で見てきたように、図をちゃんと描けることが屈折を理解するコツです。
- 境界面と光が交わるところに垂線を引く
- 光と垂線との間にできる角に注目する
この2点が守れているかよく確認して、図を描く練習をしておきましょう。
屈折の直前対策法!
それでは具体的に、屈折の直前対策としてどのようなことに取り組めば良いのでしょうか?
入射角と屈折角の大小関係をおさらいする!
「大気(空気)側の角度がいつも大きい」と覚えておきましょう。
身の周りの現象と合わせて覚えておく!
先ほどのように覚えていても、受験本番という慣れない環境では緊張して思い出せないこともあり得ます。
そんなときは、カップの底の硬貨や水中から空を見たときのようすを思い出してみましょう。
身の周りで見たときどうだったかな?という記憶と合わさることで、思い出すきっかけになります。
まとめ
屈折という現象が理解できたでしょうか?
丸暗記で乗り切ろうとするとかえって難しくなるのがこの単元です。
面倒がらずに図に描いて、いつでも思い出せるようにしておきましょう!