「いったい基本的人権とはなにを指しているの?」
いろんな「権利」が登場してわからなくなりがちな「基本的人権」。
この記事でポイントを整理しながら学んでいきましょう!
基本的人権とは
「基本的人権の尊重」は、国民主権・平和主義とならぶ日本国憲法3つの基本原理の1つです。
基本的人権とは「一人ひとりの個性を尊重し、尊厳をもって人間らしくあつかう」ための権利です。
基本的人権を尊重するために必要な考え方として「法の下の平等」と「公共の福祉」がセットで挙げられます。
また、国が基本的人権を保障してくれる一方で、私たちには国に対する義務があります。
基本的人権をポイントに分けて詳しく解説!
ここからは、次のようなポイントに整理して基本的人権を詳しく解説していきます。
- 基本的人権に含まれる権利
- 基本的人権を尊重するために必要な考え方
- 個人の権利と国の関係
- 新しい人権
それでは、順番に見ていきましょう。
基本的人権に含まれる権利
基本的人権とはいくつかの権利の総称のことです。
この基本的人権に含まれる権利には平等権・自由権・社会権・参政権などがあります。
これらの権利は内容に応じてさらに細かく分けられています。
具体的にどのような権利があるのか、整理しながら見ていきましょう。
①平等権・・・人種や性別などによって差別されない権利
②自由権・・・自由に活動できる権利
精神の自由
身体の自由
経済活動の自由
③社会権・・・人間らしい生活を送れる権利
生存権「健康で文化的な最低限度の生活」
教育を受ける権利
勤労の権利
労働基本権
④参政権・・・政治に参加できる権利
選挙権
裁判を受ける権利
このように、基本的人権とひとくくりに言っても内容は多岐にわたっています。
これらの権利の名前を全部覚えるのは大変なので「どういった内容の権利が基本的人権に含まれるのか」を押さえておきましょう。
基本的人権を尊重するために必要な考え方
「基本的人権を尊重しよう」と思ったとき、必要になる考え方が2つあります。
それが「個人の尊重」と「法の下の平等」です。
個人の尊重
憲法第13条に、個人の尊重の原理というものがあります。
「一人ひとりの個性を尊重し、尊厳をもって人間らしくあつかう」というのが「個人の尊重」の原理です。
基本的人権は、この個人の尊重の原理に基づいた権利のことを指します。
つまり「一人ひとりの個性を尊重し、尊厳をもって人間らしくあつかう」ための権利が「基本的人権」ということです。
法の下の平等
さて、「個人の尊重」を実現するためには、基本的人権のほかにもうひとつ必要なものがあります。
それが「法の下の平等」です。
法の下の平等とは「すべての人を平等にあつかう」ためのもので、憲法第14条に記されています。
いくら基本的人権が尊重されていて自由があるからといって、他人の人権を侵害してはいけません。
自分の自由のために他人の人権が侵害されてしまったら、その被害にあった人の人権は尊重されていないことになるからです。
つまり、いくら自由といっても自由には限界があるのです。
このような、お互いの人権を守るために必要な限界のことを「公共の福祉」といいます。
個人の権利と国の関係
ところで、こうした権利は誰が保障してくれるのでしょうか?
その答えは国です。
私たち個人(国民)の権利は国(国家)が保障してくれます。
言い換えると、個人が国家に対して「個人を尊重して自由な活動や幸福で平和な生活の実現」を要求し、それを保障するのが人権保障制度です。
権利と義務
権利とセットになるのが「義務」です。
国が基本的人権を保障してくれる一方で、私たちには国に対し、大きく分けて3つの義務があります。
- 子どもに普通教育を受けさせる義務
- 勤労の義務
- 納税の義務
このうち、1つめと2つめは義務であると同時に権利でもあります。
子どもの人権
ここで、大人は仕事をしているのに対して、子どもは仕事をもっていないことについて考えてみましょう。
子どもと大人には、他にも違う部分がありますね。
子どもは親の保護を受けたり、飲酒・喫煙の禁止など特別な制限を受けたりします。
だからといって、子どもは大人とは違って人権が保障されない、などということにはなりません。
子どもも1人の人間として人権が守られています。
このように、大人とは違う部分もあるけれど同様に子どもの人権を守るためのものとして「子ども(児童)の権利条約」というものがあります。
この「子ども(児童)の権利条約」は1989年に国連で採択され、1994年に日本が批准しています。
新しい人権
「プライバシーの侵害だ!」なんて言葉を耳にしたことはありませんか?
社会の変化と共に、個人や社会全体の価値観も変化します。
そうした変化に対応して、新しい人権についても考えられています。
こうした「新しい人権」には次のようなものがあります。
- 環境権
- 知る権利(情報公開制度)
- プライバシーの権利(個人情報保護制度)
- 自己決定権
そしてこういった新しい人権を守るために、どんどん新しい制度ができています。
変化する社会の中で「一人ひとりの個性を尊重し、尊厳をもって人間らしくあつかう」ため、人権保障制度も変化を続けているのです。
実際に基本的人権の入試問題を解いてみよう
それでは実際の入試問題を解いてみましょう。
以下の問題は、平成28年度都立高校入試の大問5から抜粋したものです。
“[問1]
日本国憲法は、全ての国民に勤労の権利を保障している。
勤労の権利は、日本国憲法で保障されている基本的人権のうち、社会権に分類される。
社会権を規定している日本国憲法の条文は、次のア~エのうちではどれか。
ア「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」
イ「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
ウ「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」
エ「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」”
では、早速解いていきましょう。
社会権とは「人間らしい生活を送れる権利」のことでしたね。
そのため「人間らしい生活を送れる権利」について書かれている文章が正解になります。
アは「健康で文化的な最低限度の生活」という、社会権に含まれる生存権について規定しているのでこれが正解です。
イは基本的人権を尊重するために必要な「法の下の平等」について述べています。
ウは職業選択の自由について書かれており、問題文にある「勤労」の話ではありますが、社会権についての規定ではありません。
エは公務員についての記述なので、すべての国民に関する社会権の話ではありません。
よって、答えはアです。
基本的人権の勉強方法
問題の感覚がつかめたところで、勉強方法をまとめましょう。
種類に分けて覚える!
ひとくちに「基本的人権」と言っても、いろいろな権利が含まれています。
それらをバラバラに覚えるのではなく「自由に活動できる権利だから、精神・身体・経済活動の自由を全部まとめて自由権と言うんだな……」というように、種類ごとに分類しながら覚えると効率的です。
個人と国の関係をイメージする!
権利を保障されている自分たち「国民」という個人と国との関係性をイメージしておきましょう。
個人は国家に対して「個人を尊重して自由な活動や幸福で平和な生活の実現」を要求するとともに、3つの義務を負っています。
そして国家は人権保障制度によって、個人の基本的人権を保障しています。
基本的人権の直前対策法!
それでは具体的に、基本的人権の直前対策としてどのようなことに取り組めば良いのでしょうか?
条文を確認しよう
都立高校入試では、あてはまる憲法の条文を選ぶ問題が出されることがあります。
そのときに正しい選択肢を採れるよう、権利の名前を覚えるときは憲法の条文にも目を通しておきましょう。
まとめ
基本的人権について理解できたでしょうか?
用語がたくさんあるように見えますが、種類ごとに整理していけば効率良く覚えられます。
どんな種類に分けられているのか、内容をイメージしながら勉強してみてくださいね。