中学2年の理科で「電磁誘導」について学びます。電磁誘導は発電などに用いられていますが、普段の生活ではあまり実感する現象ではないかもしれません。
そういう意味では理解しづらい概念です。
ここでは、電磁誘導とはどういうものか分かりやすく解説します。
そして、電磁誘導をどのように学んでいったらよいのか、中学生の勉強法、高校入試に役立つ勉強法を伝授します。ぜひ参考にしてください。
電磁誘導とは
磁石が引きつけあったりしりぞけあったりすることから、自然界には目には見えない磁界というものがあることが分かります。
「磁界」のさらに詳しい解説はこちらの記事をチェックしてください。
その目には見えない磁界の働きとして、磁石をコイルに近づけたり遠ざけたりすると、コイルに電流が流れるという不思議な現象があります。
この現象を「電磁誘導」といいます。
電磁誘導は日常生活では体験しない現象ですから難しいと感じるかもしれません。それゆえしっかり学んで理解を深めましょう。
都立入試における電磁誘導の出題傾向
まず、気になる高校入試での出題実績を調べてみましょう。都立入試を例にとって解説します。
過去5年で2回の出題がありました
都立入試の過去5年間の出題で、電磁誘導の問題は2回ありました。
- 令和3年⑥電流が作る磁場、電磁誘導、電流が磁界から受ける力
- 平成30年⑥電流と磁界、電磁誘導、磁界が電流に及ぼす力
出題頻度は高いといえるでしょう。
電磁誘導は応用問題として出題されることが多い!
大設問全てを使った応用問題として出題されることが多いです。よって、点差がつきやすい問題だということになります。
ここで確実に得点してライバルに差をつけたいところです。以下の解説をしっかり読んで電磁誘導を攻略しましょう。
電磁誘導のところで押さえておくべき事項
電磁誘導のところで押さえておくべき事項は以下の項目です。
- 電磁誘導が生じるのはどのようなときか
- 電磁誘導の向き、誘導電流
- 2つの頻出パターンを押さえる
- 誘導電流を大きくする方法
電磁誘導が生じるのはどのようなときか
下図を見てください。
コイルに棒磁石のN極が向けられています。磁石が作った磁力線がコイルを貫いているのが分かりますか?
ここでこの棒磁石をコイルに近づけます。
すると、磁石に近い方が磁力線は密集しているので、コイルを貫く磁力線の本数が増えます。
このとき何が起こるかというとコイルに電流が流れるのです。不思議ですね。
このようにコイルを貫く磁力線の本数が変化すると電磁誘導が生じます。
電磁誘導の向き・誘導電流
電磁誘導が生じたときに流れる電流を「誘導電流」といいます。
ところで、コイルに流れる電流は時計回りと反時計回りがありますね。誘導電流はどちら向きに流れるのでしょうか?
それを決めるのが「レンツの法則」です。これは「コイルを貫く磁力線の本数の変化を妨げるような誘導電流を流す」という法則です。
先程の図に戻ってみましょう。
この図でN極をコイルに近づけるとします。これによってコイルを貫く右向きの磁力線の本数が増えます。
すると、コイルは磁力線の本数が増えるのを嫌って、左向きの磁界ができるような向きの誘導電流を流します。
よって、コイルに流れる誘導電流は下図の向きです。
右ネジの法則を用いて、左向きの磁界ができる電流の向きを求めます。
右ネジの法則(右手の法則)は下図のようになります。
この説明だけでは分かりにくいかもしれません。その場合、以下の頻出パターンの具体例を見れば分かりやすくなると思います。
2つの頻出問題パターンを押さえる!
高校入試に出題される電磁誘導はパターンがあります。
- コイルに磁石を近づける・遠ざけるというパターン
- 金属レールの上で金属棒を滑らせる
というパターンの2つです。
早速、やってみましょう。
頻出パターン①コイルに磁石を近づける・遠ざける
まず、コイルにN極を近づけるパターンです。
コイルを貫く右向きの磁力線の本数が増えるので、左向きの磁界ができるような向きの誘導電流が流れます。その向きは右ネジの法則で求めます。
次はコイルからN極を遠ざけるパターンです。
コイルを貫く右向きの磁力線の本数が減るので、右向きの磁界ができるような向きの電流が流れます。右ネジの法則で向きを決めます。
次はコイルにS極を近づけるパターンです。
コイルを貫く左向きの磁力線の本数が増えるので、右向きの磁界ができるような向きの誘導電流が流れます。やはり右ネジの法則で向きを決めます。
最後にコイルからS極を遠ざけるパターンです。
コイルを貫く左向きの磁力線の本数が減るので、左向きの磁界ができるような誘導電流が流れます。右ネジ法則で向きを決めます。
頻出パターン①は以上です。
コイルを貫く磁力線の本数が増えるか減るか判断して、それを妨げるような誘導電流の向きを右ネジの法則で決める、という手順です。
頻出パターン②金属レールの上を滑る金属棒
頻出パターン②は例題を解きながら説明します。
(例題)
図のように、平行に設置された2本の金属レールの間に、磁石をN極が上になるように等間隔に置く。2つの金属レールの左端は導体でつながれている。
レールの上でレールと直角になるように置いた金属棒を滑らせると装置に電流が流れた。金属棒を右に滑らせたとき流れる電流は装置を上から見て時計回りか反時計回りか答えよ。
(解説)
磁石の上面がN極なので磁力線は上向きです。それから、金属棒の左側に1巻きのコイルが出来ていますね。
金属棒を右に滑らせるとコイルを貫く上向きの磁力線の本数が増えます。それを妨げようとして下向きの磁界ができるような向きの誘導電流がコイルには流れます。その向きは右ネジの法則から時計回りですね。
誘導電流を大きくする方法
コイルに生じる誘導電流を大きくする方法は以下の通りです。
- 磁石をすばやく動かす
- コイルの巻き数を増やす
- 磁力の強い磁石にする
電磁誘導の勉強方法について
電磁誘導を学ぶ際のポイントを以下の3つに整理します。
- コイルを貫く磁力線の本数が増えているのか、減っているのかを見抜ける
- 磁力線の本数の変化を妨げるような誘導電流が流れることを理解する
- 磁石とコイルの図から、流れる誘導電流の向きが判断できるようになる
コイルを貫く磁力線の本数が増えているのか、減っているのかを見抜ける
電磁誘導の問題でまず考えることは、コイルを貫く磁力線の本数が増えているのか、減っているのかを調べなくてはいけない、ということです。
これを見抜けないと正解にたどり着くことは出来ません。
磁力線の本数の変化を妨げるような誘導電流が流れることを理解する
磁力線の本数の変化が判断できたら、次はその変化を妨げるような磁界を作る誘導電流が流れると考えましょう。
右向きの磁力線の本数が増えているのなら、左向きの磁界ができるような誘導電流だということになります。
その際、誘導電流の向きは右ネジの法則を適用して求めます。
磁石とコイルの図から、流れる誘導電流の向きを判断できるようにする
試験で出題される電磁誘導の問題は、磁石とコイルの図が与えられるのが通例です。
それに対処するために、図から判断して正しく誘導電流の向きを導けるように練習問題を繰り返しましょう。
まとめ
ここまで電磁誘導について学んできました。最後にまとめます。
入試に出題される電磁誘導は、コイルを貫く磁力線の本数の変化を調べて、それを妨げるような誘導電流の向きを右ネジの法則から求める、というのがルーティーンです。
それを理解した上で、以下のような事項を押さえておきましょう。
- 電磁誘導とは、コイルを貫く磁力線の本数が変化した際に誘導電流が流れる現象
- 誘導電流の向きは、磁力線の本数の変化を妨げる磁界を作る向き
- 頻出パターンとして、コイルに磁石を近づける・遠ざけるパターンと金属レールの上を金属棒を滑らせるパターンがある
- 誘導電流を大きくする方法には、磁石をすばやく動かす、コイルの巻き数を増やす、磁力の強い磁石にする、などがある
電磁誘導の問題は、図を読み取って誘導電流の向きを正しく判断できることがポイントです。
以上、頻出の電磁誘導を攻略してライバルに差をつけましょう!