天気は私たちの生活に密接に関わっていますが、スケールの大きな話なので捉えるのは難しいものです。
そこで、今回の記事では天気を理解するためのポイントを一つひとつ確認していきます。
天気とは
天気とは、大気中で起こるさまざまな自然現象(気象)を総合的に表現したものをいいます。
天気が私たちの生活にどのような関わり方をするのかは、影響する範囲や規模、期間によって大きく3種類に分けられます。
- 気象災害:命の危険につながる。台風・低気圧による豪雨や強風など。
- 社会経済活動との関係:農業や交通への影響。
- 日常生活との関係:洗濯や服装選びなどを左右する。
生活との関わり方は違っても、いずれも天気を対象にしていることは変わりません。
つまり、天気を捉えるために共通するポイントがあるのです。
高校入試の「天気」分野を理解する上で覚えておきたいポイント!
概要がつかめたところで、ここからは天気を理解するために押さえておきたいポイントをご紹介します。
- ポイント①気象要素
- ポイント②天気図を読み取ろう
- ポイント③天気の移り変わり
- ポイント④より規模の大きい天気の変化
では、順番に見ていきましょう。
ポイント①気象要素
天気を把握するための要素を気象要素といい、雲量、気温、湿度、気圧、風向、風力があります。
それぞれの気象要素を調べることで以下のことが明らかになります。
雲量→天気記号が決まる
気温・湿度→暖かさや空気中の水分量を表す
気圧→大気の圧力を表す
風向・風力→風の特徴を表す
それでは具体的に見ていきましょう。
雲量から天気記号が決まる
雲量とは、文字通り空にある雲の量を表すものです。
0~10の11段階に分かれており、雲量0〜1のときを快晴、2〜8を晴れ、9〜10をくもりといいます。
このように、雲量は「天気記号」を決める大切な要素です。
ただし、雨や雪が降っていることが観測できる場合は、雲量によらず天気記号が決まります。
天気不明は海上の天気などに使われることが多いですが、入試問題で見かけることもあります。
雪の記号と似ているので、区別できるようにしておきましょう。
気温と湿度
気温と湿度は毎日の天気予報でもおなじみの要素ですね。
こちらは値がそのまま暖かさや空気中の水分量を表しています。
また、理科では温湿度計をそのまま読む以外に、乾湿計の読み方が問われることもあります。
気圧
気圧は大気の圧力を表した値で、単位はhPaです。
気圧が高いか低いかによって天気の傾向がわかります。
まわりより気圧の低いところではくもりや雨、高いところでは晴れになることが多いです。
詳しくは「気圧」という記事にまとめていますので、そちらも合わせてご覧ください。
風向と風力
風向と風力はどちらも風の特徴を表したもので、これらの変化は天気の変化と密接な関係があります。
風向は「風がどこからくるか」を16方位に分けて示しています。
風が向かう方向ではないので注意が必要です。
風力は風の強さを表しており、風速や周辺のようすから13段階に分けられます。
矢ばねの書き足し方は次の図を使って覚えましょう。
では、風向と風力を合わせて図示してみましょう。
気象要素と天気図記号を対応させられるようになるには、少し慣れが必要です。
図をうまく活用しながら練習してみてくださいね。
ポイント②天気図を読み取ろう
各地で観測された気象要素を図記号を使って地図上に記入・記録したものを天気図といいます。
つまり、天気図を見れば天気のようすや気圧の分布(気圧配置)がわかるということです。
高校入試では、天気図から天気のようすを読み取る問題、または気象要素から天気図を選ぶ問題がよく出題されます。
天気図の読み取り方
天気図は次の手順に沿って読み取っていきます。
(1)天気図上の方位を確認する
(2)天気図記号を見る
天気記号から雲量、矢ばねから風向と風力がわかります。
(3)等圧線の値を見る
等圧線は1000hPaを基準に4hPaごとにひき、20hPaごとに太線で示されています。
1気圧=1013hPaが基準ではないので注意しましょう。
こうして天気図を読み取ることで、どんなことがわかるのでしょうか?
天気図から何がわかるのか?
天気図を見れば、天気の傾向や風の特徴がわかります。
たまに天気図記号が描かれていないことがありますが、そんなときでも焦らず天気図を読み取ることで、天気についての情報が得られます。
天気の傾向
気圧配置から、天気の傾向がわかります。
「気圧」の項目で学んだとおり、まわりより気圧の低いところではくもりや雨、高いところでは晴れになることが多いです。
風向
風は気圧の高い方から低いほうへ流れるので、等圧線を見れば風の向きがわかります。
等圧線に垂線を引き、気圧の高い方から低い方へと風が吹くイメージです。
ただし、地球の自転の影響で、風向は時計回りに45°だけずれることに注意しましょう。
なぜ45°ずれるのかは発展的な内容なのでここでは説明しませんが、気になる方は「コリオリ力(りょく)」で調べてみてください。
また、上空では風の流れが低気圧の上空→高気圧の上空という流れになるので気を付けましょう。
これは空気の循環で説明できますが、詳しくは気圧の記事をご覧ください。
風力
風の強さは等圧線の間隔を見ればわかります。
等圧線の間隔が狭いほど風力は強く、間隔が広いほど弱くなります。
標高の高さを示す等高線の間隔が狭いほど斜面が急になるのと同様のイメージです。
ポイント③天気の移り変わり
さて、ここまで天気の表し方(捉え方)と天気図の見方を解説してきましたね。
ここからは刻一刻と変化する天気をより理解するために、天気の移り変わりについて考えていきましょう。
天気はそもそも、水と大気の循環によって変化します。
そして水と大気を動かしているのは太陽のエネルギーです。
そのため、太陽の変化によって水と大気がどう変化するかイメージすることが、天気の理解にはとても大切です。
太陽は1日に1回昇って沈むので、天気は1日のうちでも変化するのです。
大気の変化
太陽が出ているとき、大気の温度、つまり気温は上がりますね。
飽和水蒸気量のところで学んだように、気温が上がると大気中に含んでおける水分量が増えるので湿度は下がります。
よって、晴れた日の湿度のグラフは、気温と逆の形の曲線になります。
また太陽の出ている晴れの日は天気や気温の変化が大きく、雨やくもりの日は一般に変化が小さくなります。
では太陽が南中する正午ごろが最も気温が上がるのかと言うと、そうではありません。
大気や地面が太陽の熱で温まるには時間がかかるため、14時頃に最高気温となることがほとんどです。
また、寒く晴れた夜は温まった地面からの熱が大気中に逃げていくため、放射冷却が起こります。
水の変化
太陽によって水は水蒸気になり、雨となって降り注ぎ、また海へと流れていきます。
このとき、大気も同時に温められているので、低気圧/高気圧と天気には密接な関係があるのです。
こちらについては「気圧」の記事で解説しています。
また、温度変化によって水は霧(きり)や露(つゆ)になります。
こちらは「飽和水蒸気量」の記事で露点とともに解説しています。
ポイント④より規模の大きい天気の変化
ここまでは、日本の天気図や1日の中での変化について見てきました。
しかし、太陽による大気や水の循環は地球規模で起こっています。
よりスケールの大きな気象を理解するためには、気団や前線を考える必要があります。
気団
気団とは、気温や湿度といった性質がある程度一定である、大きな空気のかたまりを指します。
日本の周りには、シベリア気団、オホーツク海気団、揚子江気団、小笠原気団といった気団があります。
どの気団の影響力が大きくなるかによって日本の気候が変動します。
これが日本に四季の移り変わりが見られる原因です。
前線
気団のうち空気のかたまりが冷たいものを寒気団、暖かいものを暖気団といいます。
季節の変動にともなって気団が動くと、この寒気団と暖気団がぶつかることがあります。
このときぶつかってできた境界面を前線面といい、前線面が地面と交わってできる線を前線といいます。
このうち天気図に描かれるのは「前線」の方です。
なぜなら、天気図は日本を真上から見た平面上に気象情報を描いたものだからです。
前線は次のように分類されます。
- 寒冷前線
暖気よりも寒気の勢いが強い前線。
寒冷前線が通過すると次第に寒気におおわれるため、気温が下がる。 - 温暖前線
寒気よりも暖気の勢いが強い前線。
温暖前線が通過すると次第に暖気におおわれるため、気温が上がる。 - 停滞前線
寒気と暖気の勢いが同等のため、しばらく同じ場所にとどまり続ける前線。
梅雨前線や秋雨前線は停滞前線に分類されるため、梅雨や秋雨はしばらく続く。 - 閉塞前線
寒冷前線が温暖前線に追いついてできる前線。
境界面が重なり合うので天気は不安定になりやすい。
天気図に描かれている前線がどの分類に当てはまるのか、読み取れるようにしておきましょう。
高校入試「天気」分野では実際にどのような問題が出題されるのか?
それでは実際の入試問題を解いてみましょう。
以下の問題は、平成29年度都立高校入試の大問3から抜粋したものです。
“天気の変化と気象観測について、次の各問に答えよ。
<観測>
天気の変化について調べるために、ある年の10月1日から連続した2日間、福岡における3時間ごとの気象データを収集した。気温、湿度、気圧は自記記録計により測定し、天気、風向、風力、天気図はインターネットで調べた。
図1は福岡における3時間ごとの気温、湿度、気圧の気象データを基に作成したグラフと、それぞれの時刻における天気、風向、風力の気象データを基にかいた天気図記号を組み合わせたものである。
<結果>
図1から、福岡における10月1日と10月2日のそれぞれの天気の特徴を組み合わせたものとして適切なのは、次の表のア~エのうちではどれか。”
では、早速解いていきましょう。
まず図1の中で10月1日のデータに着目しましょう。
天気図記号から、1日を通して雨かくもりだったことがわかります。
昼頃の気温は高いものの雲量は多いので、選択肢はアかイに絞られます。
選択肢の「昼頃、南寄りの風が吹き、気温が高くなっている」という記述も天気図記号と合致します。
次に10月2日のデータを見ると、1日を通して晴れか快晴の天気で、雲の量が少ないことがわかります。
さらに日中の風向は北寄りであることも矢ばねの向きから確認できます。
よって、正解の選択肢はアです。
高校入試に向けた「天気」の勉強方法について
問題の感覚がつかめたところで、勉強方法をまとめましょう。
水と大気の動きをイメージしよう
天気の移り変わりは水と大気が動くことによるものです。
そのため、天気の変化を理解するにはイメージトレーニングがとても大切です。
「晴れて気温が上がったら、水や大気はどう変化するかな?」というようにイメージする練習を十分にしておきましょう。
頭の中で天気の変化を思い描くことができれば、天気図の読み取り精度も向上します。
天気の直前対策法!
それでは具体的に、天気の直前対策としてどのようなことに取り組めば良いのでしょうか?
天気図の問題をよく練習しよう!
天気図の読み取りは慣れが大切です。
読み取りは難しく、初めのうちは「こうかな?」と思っても予想が外れることも多いかもしれません。
でも、たくさん問題を解いていくうちに感覚がつかめてきます。
正解率が低いから苦手と決めつけず、解答と照らし合わせながら読み方のコツを習得しましょう!
自分の予想と正しい答えのズレを修正していく気持ちで取り組んでみてください。
特徴的な天気図は覚えておく!
読み取り問題の練習を通して意識しておきたいポイントがあります。
それは、台風や梅雨といった一目で特徴がわかるような天気図は覚えておくことです。
特徴的な天気図を頭に入れておくと、問題文と選択肢の比較がグッとスムーズになります。
まとめ
天気は覚える単語が多く現象も複雑で、苦手な人も多い分野です。
でも、ポイントに沿って天気の捉え方を学んでいけば心配はいりません。
苦手な人が多いからこそ差がつく分野なので、ここを得点源にして一歩リードしましょう!