選挙カーや開票速報といった「選挙」に関する言葉を聞いたことはありませんか?
この記事では、政治に触れる身近な機会である「選挙」について学んでいきます。
用語がたくさん出てきますが、丸暗記するよりも「なぜそんな仕組みになっているんだろう?」と考えながら覚えると記憶に定着しやすくなります。
ぜひ仕組みをイメージしながら読んでみてください。
選挙とは
選挙とは「国会議員や地方公共団体の長や議員を選ぶ」ことです。
日本は、国民が政治の主体であるという「国民主権」に基づいて国が運営されていますが、国民全員が政治家として働いているわけではありません。
国会議員が国民の代表として国会で政治をしています。
この代表者を選ぶのが「選挙」です。
そのため、選挙は私たち国民が政治に参加する重要な機会となっています。
選挙には普通選挙・平等選挙・直接選挙・秘密選挙という4つの原則があります。
また選挙には選挙区制と比例代表制という、大きく分けて2つの選挙制度があります。
選挙を理解するためのポイント!
では、選挙についてポイントを整理しながら詳しく見ていきましょう。
- 選挙の4原則
- 選挙制度
- 日本は「小選挙区比例代表並立制」
- 政党と選挙
選挙の4原則
選挙には、普通選挙・平等選挙・直接選挙・秘密選挙という4つの原則があります。
それぞれどのような原則なのか、順番に見ていきましょう。
普通選挙
日本では、満18歳以上のすべての国民に選挙権が憲法によって保障されています。
かつては財産や性別によって選挙権が認められていない時代がありましたが、一定の年齢に達したすべての人に選挙権を認めるというのが普通選挙の原則です。
なお、2016年までは選挙権を与えられる年齢は20歳以上でした。
平等選挙
一人一票を投じ、選挙権をもつ人の一票の価値は平等であるというのが平等選挙です。
この原則がある一方で、選挙区の有権者数の違いによって一票あたりの影響が異なるといった課題が生じています。
この課題を「一票の格差」といいます。
直接選挙
選挙権をもつ人が直接候補者を選んで投票することを直接選挙といいます。
これに対し、選挙権をもつ人が選んだ代表者が候補者を選び投票することを間接選挙といいます。
内閣総理大臣の指名などは、選挙権をもつ国民が選んだ国会議員が内閣総理大臣を決めるので、間接選挙にあたります。
秘密選挙
無記名で投票することを秘密選挙といいます。
誰が誰に投票したのかをわからないようにすることで、自由に投票する候補者を選ぶことができるようになっています。
選挙制度
選挙制度は、選挙区制と比例代表制という2つに大きく分けられます。
どちらの選挙制度にもメリットとデメリットがあります。
選挙区制
選挙区ごとに代表者を選出するのが選挙区制です。
1つの選挙区から1人を選ぶ場合は小選挙区制、2人以上選ぶ場合は大選挙区制といいます。
メリット:選挙区の有権者の多数派から表を得た人が当選するため、有権者の意思を反映しやすい
デメリット:当選者以外に投票した票が政治に反映されなくなってしまう
比例代表制
得票に応じて各政党へ議席を配分するのが比例代表制です。
メリット:同じ政党に投票した人の数によって議席数が決まるため、少数派の意見も反映されやすい
デメリット:議会がたくさんの政党で構成されることになり、議論に時間がかかったり政策の見通しがわかりにくくなったりすることがある(小党乱立)
日本は「小選挙区比例代表並立制」
2つの選挙制度を見てきましたが、日本はどちらの選挙制度を使っているのでしょうか?
答えは両方です。
これまで見てきたとおりどちらの制度にも良し悪しがあるので、組み合わせて使うことでバランスをとっているのです。
選挙区制と比例代表制を「並立」しているので、これを「小選挙区比例代表並立制」と呼びます。
どちらの制度で何人の議員を選ぶのかは、選ぶ対象によって異なります。
衆議院選挙(衆院選)と参議院選挙(参院選)の違いを見てみましょう。
課題
日本は小選挙区比例代表並立制をとることでそれぞれのメリットとデメリットの偏りを減らしてはいますが、それでもまだ課題があります。
特に大きな課題として「棄権が多いこと」と「一票の格差」が挙げられます。
まず1つめの課題である「棄権が多いこと」について説明します。
直近で行われた衆院選と参院選の投票率はいずれも50%前後と低く、有権者のおよそ2人に1人が投票していないことになっています。
投票していないということは、その人の意見が国政に反映されないということです。
日本の選挙は多数決を原則としているので、もしその人たちがきちんと投票していれば、多数派の政党が異なっていたかもしれません。
民意を反映した国政を行うために、棄権を減らし投票率を上げることは重要な課題となっています。
2つめの課題である「一票の格差」とは、選挙区によって一票の重みに差が生じていることをいいます。
たとえば小選挙区制では1つの選挙区につき1人の候補者を選びますよね。
A選挙区の有権者数が1万人、B選挙区の有権者数が1万5千人(=1.5万人)いたとしましょう。
A選挙区では1万人あたり1人の候補者を選んでいるのですから、一票の重みが平等であるならB選挙区では1.5人の候補者を選べることになりそうです。
しかし実際には「1.5人」を選ぶことはできないので、B選挙区では1.5万人あたりで1人の候補者を選ぶことになります。
つまり、A選挙区に比べてB選挙区の一票の方が「軽い」ことになってしまっています。
こうした「一票の格差」は平等選挙に矛盾するため、大きな課題となっています。
政党と選挙
比例代表制で出てきた「政党」について見ていきましょう。
国民は選挙によって代表者を選ぶと学んできましたが、何人もいる立候補者の中からどうやって代表にしたい人を決めているのでしょうか?
誰に投票するかを考えるときに参考にするのが「政党」です。
政党とは、政治に対して同じ意見をもつ人が集まって自分たちの考えを実現するためにつくる団体です。
国民は、それぞれの政党の主張を見聞きして、自分の意見・要望に応じて支持する政党を選びます。
今の日本には、自由民主党(自民党)・立憲民主党・公明党・日本維新の会・日本共産党など10以上の政党があります。
また、議員の中には政党に所属しない「無所属」の人もいます。
一人ひとり考え方や意見が異なるように、政党によって政治に対する考えは違います。
こうした考え方の異なる政党が互いの意見を主張し合って政治を行うことを「政党政治」といいます。
与党と野党
基本的に多数決で決めるので、同じ主張の人がたくさんいる方が自分たちの考えを実現しやすいです。
そのため、政党政治ではどこの政党も自分たちの政党から多くの議員を出したいと考えます。
そして、選挙で過半数を獲得することで「与党」となれるのです。
与党は1つの政党を指すこともあれば、似た主張の政党同士がタッグを組んで「連立政権」をとることもあります。
また与党以外の政党のことを野党といいます。
与党と野党の政治に対する考え方は異なることが多いので、お互いに意見を交わすことで足りない視点を補うことができます。
選挙の練習問題を解いてみよう
ここまで選挙について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
それでは確認のために問題を解いてみましょう。
“次の各問に答えよ。
(1)4原則のうち、一人一票の選挙を何選挙というか。
(2)得票に応じて各政党の議席数を決める選挙制度を何というか。
(3)政治について同じ考えをもつ人々がつくる団体を何というか。”
では、早速解いていきましょう。
(1)は一人一票という同じ価値をもつ原則のことなので「平等選挙」です。
(2)は比例関係のように得票に応じて議席数を配分する「比例代表制」です。
(3)の「政治について同じ考えをもつ人々がつくる団体」は「政党」でしたね。
国民は自分の意見や要望に応じて支持する政党を選び、選挙に臨みます。
よって、答えは(1)平等選挙、(2)比例代表制、(3)政党となります。
選挙の勉強方法
問題の感覚がつかめたところで、勉強方法をまとめましょう。
身近なところでイメージしてみよう
クラスや部活など、身の回りで学級委員長や部長といった役割をもつ人を選ぶ機会があります。
そうしたケースに選挙区制や比例代表制をあてはめて、選挙制度を具体的にイメージする練習をしてみましょう。
「各学年に5クラスあるとしたら、中学校全体で小選挙区が15個あるから……」
「学校全体の部活を人数から多い順に並べると、サッカー部、吹奏楽部と続くから……。獲得した部員の数に応じて議員の数が決まるみたいなものかな?」
このように身近なものでイメージすることで、グッと選挙のことがつかみやすくなります。
選挙の直前対策法!
それでは具体的に、選挙の直前対策としてどのようなことに取り組めば良いのでしょうか?
衆院選と参院選の違いを覚える!
選挙についてわかってきたなと思ったら、衆院選と参院選の違いも覚えましょう!
衆議院と参議院では選挙の議員定数に違いがあります。
他の違いとも合わせて覚えておきましょう。
まとめ
選挙について理解できたでしょうか?
原則や制度が決まっているのには理由があります。
もし原則がなかったらどうなるのか、制度のメリットとデメリットはなにか、背景を考えながら勉強を進めることで覚えやすくなります。
ぜひ具体的にイメージして、選挙への理解を深めてください!