都立高校入試の社会には、定期テストで出題されるような一問一答の単語暗記だけでは対応出来ず、資料を基に読み解く問題が多いので日頃から資料集を活用して勉強する必要があります。
今回はその都立高校入試社会の傾向と対策について紹介します。
都立高校入試社会の傾向分析
大問は6つ構成で、順に3分野の小問集合、世界地理、日本地理、歴史、公民、3分野の統合問題が出題されるのが例年の傾向です。配点は全ての問題が5点となっています。
ここ数年の傾向としては、平成29年度より「完答式問題」が増加しています。
完答式問題とは、例えば「A~Dいずれかの県に当てはまるものを、以下のア~エからそれぞれ選べ」のように、それぞれの選択肢を正しく選ばなければ点数にならない問題です。部分点などがないため、差がつきやすい問題になっています。
都立高校入試英語の大問構成と出題範囲
大問構成はこのようになっています。以下の大問構成は過去15年間変化はありませんので、今後も変わる可能性は低いと予想されます。
大問1:地理・歴史・公民の小問集合
大問2:地理(世界)
大問3:地理(日本)
大問4:歴史
大問5:公民
大問6:地理・歴史・公民の統合問題
大問1 地理・歴史・公民の小問集合
大問1は3分野の基本問題で、地理・歴史・公民それぞれの分野から1問ずつ出題されます。
地理は、地形図や地図記号の知識を問う問題が出ることが多くなっています。
歴史は、与えられた文章から歴史上の出来事を考えそれが起きた場所を地図から選ぶ問題や、日本史の文化・政治・経済について書かれた文章を読み、適した語句を選ぶ問題が出ます。
公民は、文章で問われた内容に一致する用語を選択肢の中から選ぶ問題が頻出です。
大問2 地理(世界)
大問2は世界の地理の総合問題で、資料を使った読み取り問題が3問出題されます。内容は主に2つのタイプがあります。
- 知識タイプ:気候や産業、輸出入品の特徴からどの国が当てはまるのかを問う問題
- 読解タイプ:図や表、グラフなどの資料の内容を正しく説明したものを問う問題
いずれのタイプも選択肢ですが、近年完答問題が増えたため全ての選択肢が合わなければ点数にならないものになりました。
大問3 地理(日本)
大問3は日本の地理の総合問題で、大問2と同様資料を使った読み取り問題が3問出題されます。
内容については、大問2で紹介した「知識タイプ」と「読解タイプ」があります。日本全国まんべんなく問われるので、各地域の気候や産業、人口についてはしっかりと確認しておきましょう。
問1・2は選択式の問題ですが、問3は資料から読み取れることを書く記述問題になります。
大問4 歴史
大問4は日本史の総合問題で、4問出題されます。
例年、年代の並べ替え問題や出来事が年表のどこにあてはまるかといった問題が出題されます。時代の変化を縦のつながりで把握することが必要になっています。
それぞれの時代の移り変わりや年代ごとの出来事などは年表を見ながら覚えましょう。
大問5 公民
大問5の公民は、与えられた文章について答える問題で、4問出題されます。政治分野から2問、経済分野から2問というのが例年の傾向です。
また公民は地理や歴史と比較して範囲が狭いので、ありきたりな公民に関する問題は出題されない傾向にあり、予測しづらいです。日頃から社会について目を向けるようにしましょう。
さらに、毎年図表の読み取り問題も出題されるので、資料を注意深く見ておくことも必要になります。
大問6 地理・歴史・公民の統合問題
大問6は3分野の統合問題で、3問出題されます。地図やグラフ、図や年表が合わさり、3つの分野の知識が複合的に問われます。
いずれも全ての分野の知識を全て用い、答えを導き出す必要があります。近年はここでも、大問3で出題されるような資料を読み取り解答する記述問題が出題されています。
都立高校入試社会の難易度
まず、過去5年の平均点をみていきます。
令和1年度 57.0点
平成31年度 52.7点
平成30年度 61.5点
平成29年度 58.6点
平成28年度 59.3点
平均点を見る限り、平成30年度の平均点は特出して60点代と高いですが、だいたい50点台後半の平均点であることが分かりますので、この傾向は今後も続くでしょう。
都立高校入試英語の難易度については、そこまで高いわけではありません。年によって難易度は様々ですが、「基本的な知識」と「資料を読み解く力」を組み合わせれば、解答できる問題が多いです。
しかし先述した通り近年は「完答式問題の増加」と「記述式問題の増加」の傾向があるので、ただ単語の暗記をするのではなく周辺知識や前後関係などといった深い理解が必須になります。
また全ての問題1問5点なので、1つのミスが大きな失点になってしまいます。
都立高校入試社会の解答の際の時間配分
大問1:3分野の小問集合(6分)
大問2:地理(世界)(7分)
大問3:地理(日本)(7分)
大問4:歴史(10分)
大問5:公民(10分)
大問6:3分野の統合問題(10分)
社会の試験時間は、50分間になります。資料の文量の多さや設問数を基に、目安の時間を示しました。
しかし全ての大問において資料を見ながら解く問題が出題されるので、「資料を素早く読み取り問われていることを理解する力」は必要になります。
都立高校入試社会の対策と勉強法
それでは具体的に時期別に行うべき勉強法や対策をご紹介しましょう。
中1・中2のうちにやっておきたい対策
中1・中2の間は習ったことをその都度覚えていきましょう。また定期テスト対策で単語等を覚える際には資料集を見るなどして、歴史上の出来事同士の流れなども把握するようにしてください。
授業の進度が速くなる中学2年生のときには、まず何より学校の授業を大切にし、きちんと先生の話を聞いて丁寧に板書をとるようにしましょう。
さらに、都立高校の入試では、内申点も大きく関わりますので、学校の定期テスト対策はきちんとするようにし、早いうちに定期テスト対策のやり方を身に付けるといいでしょう。
中3の夏前までにやるべき対策
中3になったら、中1・中2の間に学校で習った範囲を確認しましょう。そうすることで、夏の時期に時間の余裕をもって復習に取り掛かることが出来ます。
中3の夏休みにやるべき対策
中3の夏休みの勉強で入試結果に差が付きます。本格的に中1・2の総復習をしましょう。
今までの範囲は忘れてしまっていることが多いです。きちんと総復習をして、自分の苦手な分野がないか確かめましょう。
また、夏休みはまとまった勉強時間を確保することが出来るので、弱点分野をなくするのにもってこいの時期になります。
しかし社会ももちろん勉強してほしいのですが、重点的に勉強を進めるべきなのは積み重ねが必要な「英語」と「数学」であるということは頭に入れておいてください。
中3の秋に取り組むべき対策
中3の9月ごろには少しずつ過去問演習を始めたいです。
9月というと公民などはまだ全ての範囲を授業で終えられていないと思いますが、習ったところからどんどん解いていくようにしましょう。
また、この時期からはそろそろ社会の詰め込みが必要です。秋には何周もワークを解いたり、今までの定期テストの問題をもう一度解いてみたりするなどして知識を定着させてください。
中3冬・受験直前期に取り組むべき対策
冬も過去問演習を続行してください。社会は英語や数学に比べ、短期間で集中的に勉強することで成績が伸びる教科になります。苦手だからと諦めずに、集中的に勉強してみてください。
高校入試で高得点を狙う場合は特に、直前期で「いかに多くの資料を見たか」「歴史の流れの把握をしたか」がカギになります。
直前期は今まで解いた問題集を繰り返し解いたり、記述問題でよく出そうなものを覚えたりするのはもちろん、その中で出てきた資料の内容なども覚えるようにしましょう。
直前期の勉強については、こちらの記事も参考にしてください。
高校志望校別記事32
入試に臨む上での注意点
さきほど各年の平均点を提示した通り、易化する年、難化する年などさまざまあります。
問題の傾向を見る限り、急に内容が刷新されることは滅多にないですが、大学入試でも改革がなされていることから可能性がゼロとは言えないです。
そのため入試本番にどのような内容が出たとしても、焦らず今まで通り解く必要があります。
社会では、多くの資料や文章を読み正確に選んでいくことが大切です。資料の中にヒントが隠されていることもあるので、面倒だと思わず丁寧にみていきましょう。
まとめ
都立高校入試社会の傾向と対策について説明してきました。都立高校入試の社会は、難易度がとても高いというわけではありませんが、時間内に多くの資料を読み解く必要があります。
また、近年「完答式問題」や「記述式問題」が増加し、点数を取るのが難しくなっています。
しかし社会は積み重ねが必要な英語や数学とは異なり、短期間に集中的に勉強することで成績を伸ばすことが出来る科目です。中3からでも諦めずに勉強してくださいね。