偏差値とは何か?定義やメリット・デメリットも紹介!
高校受験を準備していく中で、必ず話題に出てくるのが「偏差値」です。点数よりも偏差値が重要であるといわれるのには理由があります。それはどのような理由なのでしょうか?偏差値の定義やそのメリット、デメリットなども含めながら解説していきます。
偏差値とは何か?
偏差値とは、「テストを受けた集団の中で自分がどれくらいの位置にいるか」を表す数値このことであり、自分の成績を相対的に確認するためのものです。自分の偏差値を知ることで、自分の実力に合った高校を探すことができます。
なぜ偏差値を使うのか?
「偏差値」とは、平均点を偏差値50になるように変換し、その基準からどれくらい高いのか、あるいは低いのかということを表したものです。
「自分の点数」ではなく「偏差値」を使用する理由は、「自分の実力を相対的に把握できる」からに他なりません。
ちなみに「相対的」とは「他との関係の上に存在あるいは成立していること」を意味します。つまりここで言えば、模試やテストの成績も他の生徒と比較した「相対性」の上に成立しているのです。
どうして相対的評価でないとダメか?
偏差値とは、「相対的に自分の位置」を確認するための指標であることを見てきました。では「どうして相対評価でないとダメか」について考えていきます。
「平均点と比べてどうか?」が重要だから
テストの解答用紙を受け取ったら真っ先に確認するのが「自分の点数」だと思います。しかし、「自分の点数」にだけ目を奪われてはいけません。
「自分の点数」以上に重要なのが「平均点」です。なぜなら「自分がその集団の中でどのくらいできたのか?」ということは平均点と比べることで初めてわかるからです。
仮に自分の点数がどれほど高得点であっても、同じテストを受けたメンバーも高得点をとっていれば、出来が良いとは言えない場合もあります。
例えば、実際の試験の点数が90点だとしましょう。一見すると高得点ですが、もし他の受験生が軒並み95点以上を取っていた場合、その集団の中ではあまり良くない成績であるということになります。
以上のことから「平均点と自分の点数を比べること」が重要であると言えるのです。
集団内の点数のばらつきを見る必要があるから
テストの平均点が同じ場合でも、そのテストの点数によって偏差値が変わることが起こります。これには集団内の「点数の分布」が関わっています。
例えば、受験者全体の得点が平均点付近に密集している場合、平均点から離れた得点は獲得しにくいです。そのため平均点よりも高い点数を取ると偏差値は大きくなります。
一方、得点が分散しているテストでは平均点から離れた得点を取りやすく、平均点以上の得点であっても偏差値はそれほど上がりません。
このような理由から、同じ平均点のテストで同じ得点であっても、偏差値に違いが生じるのです。
受験は相対評価で決まるので偏差値を使うのが最適!
受験は同じテストを受けた集団の中での勝負です。そのため、合格するためには高得点を取れるかというよりも「集団の中でどの位置にいるのか?」ということを意識すると良いでしょう。
少し極端ですが、本番の試験で98点の高得点を獲得したとしても、自分以外の全員が99点を取っていれば不合格となります。
受験では、基本的に同じ組織や集団に属する他者の能力に左右されない評価形式である「絶対評価」を採用しておりません。なぜなら「絶対評価」の場合、ある基準を満たした人に無制限で合格を与えてしまうことになるからです。
受験とは、限られた枠組みの中で条件を満たす人材を確保するための仕組みと言っても良いでしょう。その形式に適しているのが「相対評価」なのです。
偏差値の計算方法について
偏差値の計算方法を具体例とともに見ていきましょう。
とある国語と社会のテストでA,B,Cの三人は以下の点数をとりました。
受験者 | 国語の得点 | 社会の得点 |
A | 76点 | 49点 |
B | 70点 | 55点 |
C | 64点 | 64点 |
「この集団における三人の国語・社会の偏差値」を算出していきましょう。
1.平均点を求める
初めに、教科ごとの「平均点」を算出します。
「平均点」は、受験者全員の点数の合計を受験者数で割ったものです。今回は、受験者数が3人なので点数の合計を3で割りましょう。
受験者 | 国語の得点 | 社会の得点 |
A | 76点 | 49点 |
B | 70点 | 55点 |
C | 64点 | 64点 |
合計 | 210 | 168 |
平均点 | 210÷3=70 | 168÷3=56 |
国語の平均点が70点、社会の平均点が56点であることが判明しました。
2.各教科の偏差に二乗をする
平均点が求められたら、次は偏差を求めます。偏差とは、個々のデータに対して与えられるものであり、「データ−平均値」で定義されるものです。
つまり、標準値からどれほどの差が生じているかを表しています。
受験者 | 国語の偏差値 | 社会の偏差値 |
A | 76―70=6 | 49―56=―7 |
B | 70―70=0 | 55―56=―1 |
C | 64―70=−6 | 64―56=8 |
偏差がもとまったら、それらをすべて二乗しましょう。
受験者 | 国語の偏差の二乗 | 社会の偏差の二乗 |
A | 6×6=36 | (―7)×(―7)=49 |
B | 0×0=0 | (―1)×(―1)=1 |
C | (―6)×(―6)=36 | 8×8=64 |
3.偏差の二乗の合計を受験者数で割る
次に、偏差の二乗の合計を受験者数で割って、各教科の分散を求めます。分散とは,データの散らばりの大きさを表す指標です。
分散が小さいほど「全体が平均に近い」ことを、分散が大きいほど「全体が平均から遠い」ことを示しています。
受験者 | 国語の偏差の二乗 | 社会の偏差の二乗 |
A | 36 | 49 |
B | 0 | 1 |
C | 36 | 64 |
合計 | 72(36+0+36) | 114(49+1+64) |
分散 | 72÷3=24 | 114÷3=38 |
国語の分散が24、社会の分散が38だと分かりました。
このデータはメンバーの国語の点数が社会に比べて、平均点の周辺にあることを明らかにしています。
4.標準偏差を求める
分散を求めたら分散の正の平方根を計算しましょう。これで各教科の標準偏差が求められます。
標準偏差はこの場合、分散と同様に得点の散らばり具合を表す数値であると考えて良いでしょう。
国語 | 社会 | |
分散 | 24 | 38 |
標準偏差 | √24=4.89・・・・ | √38=6.16・・・・ |
今回の国語のテストの標準偏差は約4.89
今回の数学のテストの標準偏差は約6.16
であることが分かりました。
5.Z得点を求める
次に、自分の点数から平均点を引いた値を標準偏差で割ります。この「平均との差」を「標準偏差」で割った値のことを、Z得点と言います。
受験者 | 国語のZ得点 | 社会のZ得点 |
A | 76―70÷√24≒1.22 | 49−56÷√38≒―1.14 |
B | 70−70÷√24≒0 | 55−56÷√38≒―0.16 |
C | 64―70÷√24≒―1.22 | 64−56÷√38≒1.30 |
6.偏差値を求める
最後に、Z得点を10倍してから50を足すと、偏差値が求まります。
受験者 | 国語の偏差値 | 社会の偏差値 |
A | 1.22×10+50≒62.2 | ―1.14×50≒38.6 |
B | 0×10+50=50 | ―0.16×10+50≒48.4 |
C | ―1.22×10+50≒37.8 | 1.30×10+50≒63.0 |
偏差値が決まったことで、点数だけでは分からなかった「特定の集団における成績の位置」を把握できるようになります。
偏差値の「基準値」「最高値」は?
偏差値は50を基準として、「平均からどれくらいの差があるか」を表した数値です。そのため自分の得点が平均点と同じであれば、偏差値は必ず50となります。
また、偏差値は一般的なテストでは通常「25〜75」の範囲に収まりますが、計算上は偏差値100以上や、0を下回りマイナスになる場合もあります。
例えば、100人が受けたテストで「99人が0点」「1人だけが100点」をとった場合、0点の人の偏差値は「-49」、100点を取った人の偏差値は「149.5」となります。
これはかなり極端なケースですが、もしもこのような結果になるのであればそのテスト自体が適していないということ。そのような偏差値にはあまり価値はありません。
偏差値をあてにしすぎてもいけない!
今述べたこと以外にも、偏差値をあてにしすぎてはいけない点がいくつか挙げられます。偏差値を正しく理解するために、偏差値の問題点を確認していきましょう。
あてにしすぎてはいけない
偏差値は自分の実力を知るための重要な指標でありますが、その偏差値を信頼しすぎること避けましょう。なぜなら、偏差値は「模試を受けた時期」の「周りの生徒と比べた自分の実力」であるからです。
例えば、受験本番前の約半年前で受けた模試でB判定が出たとします。その判定は「このままのペースで勉強を続けると、6〜7割の確率で合格できる」ということを意味しています。
言い換えると、この結果は決して「現時点の実力で本番に臨めば合格する」ということを示していません。
受験生の場合、受験本番に近づくにつれて、実力がメキメキと身につくことはよくある話です。もしかすると、自分の勉強のペース以上に周りの勉強のペースが上回る可能性もあります。
つまり、「模試の結果に一喜一憂せずに自分のペースで勉強を進めること」「現時点の偏差値だけで志望校を判断してはいけない」ということです。
母集団に注意
偏差値は、「平均点との差」と「得点のばらつき」の両方を踏まえたうえで、自分がどの程度の位置にいるのかを表した数値です。そのため、テストを受けた人数が少ない場合は利用する価値が低くなります。
また、同じ集団が受けたテスト結果を比較する場合には意味がありますが、異なる集団の偏差値を使って直接結果を比べることができません。
例えば、「全国規模の模試」と「校内テスト」の結果を比較した場合、テストを受けた集団の学力レベルや得点のばらつき具合が異なるので、公平に判断することができません。
偏差値で成績を比較する場合には、「そのテストを受けた人数」と「どれくらいの学力レベルの人が受けるテストであるか」を確認しておくことが大切です。
まとめ
偏差値の定義、偏差値の計算方法、偏差値のメリット、デメリットを紹介しました。受験に臨む際にはこの偏差値の仕組みを知っているかいないかで大きな差が生じます。自分の実力を測るために自分の点数にだけ注目せず、必ず自分の偏差値を確認しましょう。
とはいえ、偏差値はあくまでも志望校を決めるための手段でしかありません。偏差値は勉強していくことで伸ばしていくことは可能です。そのため、現状の偏差値だけで進路を決定してはいけません。高校の特色を掴んで、自分に合った高校を探しましょう。